夏こそ大きな湯船で一息! 元番頭の画家・塩谷歩波さんに聞く「町銭湯のススメ」

冷房や冷たい飲み物で体が冷える夏こそ、ゆったりと湯船に浸かったほうがよいのだそうです。そこでおすすめなのは、町にある銭湯。『銭湯図解』『湯あがりみたいに、ホッとして』の著者であり、銭湯で働かれていた経験もある、画家の塩谷歩波さんに夏の銭湯の魅力について伺いました。

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塩谷歩波

塩谷歩波

えんや・ほなみ

画家。設計事務所で働いたのち、東京・高円寺の銭湯「小杉湯」で番頭を務めた経験を持つ。「番頭兼イラストレーター」の肩書で活動した後、画家として独立。著作に『銭湯図解』(中央公論新社)、『湯あがりみたいに、ホッとして』(双葉社)など。

夏に行く銭湯の醍醐味は「帰り道」!

うだるような暑さが続くこの夏。シャワーでさっぱりと汗を流すのが気持ちのよい季節です。

しかし、実は夏こそ湯船にしっかりと浸かることも大切。冷たい飲み物を飲んだり、冷房の効いた部屋に長時間いたりと、夏は身体が冷えてしまう環境に置かれることも意外と多いのです。

とはいえ、自宅のお風呂をためて、入り終わったら掃除をして......といった一連の作業もまた面倒。そんな人におすすめなのが、町にある「銭湯」です。

今回、銭湯のあれこれについてお伺いしたのは、画家の塩谷歩波さん。東京・高円寺の老舗銭湯「小杉湯」で番頭を務めた経験を持ち、2019年には、銭湯の浴室を緻密に描いた『銭湯図解』(中央公論新社)を発表しました。

銭湯の魅力を知ったら、きっとあなたも行きたくなるはず。塩谷さん、教えてください!

――夏に入る銭湯には、どのようなよさがありますか?

塩谷さん
「一番は、帰り道が楽しいことでしょうか!  夕方の16時〜17時くらいに銭湯へ行くと、帰りはちょうど日が暮れてくる時間になります。そのタイミングで外を歩くと、涼しくて気持ちがよいんです。

ビール飲んだり、カフェに寄っちゃったりもできる。お散歩しながらアイスをかじるのもよいですね。帰り道の楽しみ方がたくさんあって、最高です。夏の夜は屋外の居心地が抜群なんですよ」

――帰り道! それは気が付きませんでした。では、銭湯の中で感じる、夏だからこそのよさはありますか?

塩谷さん
脱衣所でのスキンケアがじっくりできることですね。冬は寒くて、すぐに服を着たくなっちゃうけど、夏だったら、長時間薄着でいても大丈夫。ムダ毛処理だったり、フェイシャルパックだったりに時間をかけられます。

あとは、帰り道の話にも近いですが、外気浴の気持ちよさも夏ならではだと思います。寒い日の外気浴もよいのですが、すぐに身体が冷えちゃって、長くはいられないんですよ。慣れていない人だとしんどく感じるかもしれません。その点、夏はずーっと外にいられるんです。外気浴にちょうどよい気温で、快適ですよ

――たしかに、冬は寒くて風邪を引いてしまいそうですが、夏だと心地よい気温の場所が多いんですね。

塩谷さん
「あとは、夏に着る機会が多い和服の時にも便利ですよ。和服って、全部広げてから畳むので、片付けにスペースが必要なんです。家だとなかなか、まとまったスペースが取れないこともありますよね。

その点、銭湯は脱衣所が広い。だから和服も畳みやすいし、広々とお片付けができます。和服で銭湯に来て、洋服で帰る、という人も見かけますね。浴衣を着て遊びに行った日は、きっと汗だくになっていると思いますし、おすすめです!」

夏はぬるめの炭酸泉がおすすめ!

――夏の銭湯での、お風呂の入り方を教えてください。

塩谷さん
「夏は、あまり熱いお湯には浸からないかもしれませんね。ぬるいお湯や、ぬるめの炭酸泉に長く浸かることが多いです。

高い温度のお湯に浸かると、交感神経が優位になって眠りにくくなっちゃうんですよ。ぬるめのお湯にじっくり浸かることで副交感神経を優位にできるので、リラックスしてゆっくり休めます。身体も芯から温まりますよ」

――それなら、長くくつろげそうですね。夏に銭湯へ持っていくとよいおすすめグッズはありますか?

塩谷さん
「スースーする汗ふきシートです! 帰る直前に身体を拭くと、めちゃくちゃ爽快感を味わえます。これは夏ならではですね。あとは、ひんやり感のあるフェイシャルパックもよいですよ」

――帰り道の気持ちよさが、さらに倍増しそうです!

塩谷さん
「あとは夏に限らずですが、ドリンクを飲むために、水筒はいつも持っていっています。ペットボトルよりも環境によいですし、リーズナブルでもありますから。ロッカーに置いておいても、中身が冷たいままなのも嬉しいです。

中身は、塩とグレープフルーツのハーブティーを入れていることが多いですね。スポーツドリンクっぽいのですが、甘さ控えめでおいしいんですよ。」

保冷(保温)性があるサーモスの真空断熱ケータイマグ(JOS-550)。持ち運びしやすいキャリーループも付いていて、浴室内を移動することが多い銭湯にうってつけです。

――汗をかくので、水分と塩分補給ができるのもよいですね。銭湯ではいつも、どのくらいの頻度で水分を摂っているのでしょうか?

「私は大体1時間半くらい銭湯にいるのですが、お風呂を移動するタイミングなど、要所要所でこまめに飲んでいます。いつも1リットルくらいは飲み切っちゃいますね」

銭湯は身近だけど身近すぎない、その距離感が魅力

――銭湯に興味はあるけど、一方で「マナーがわからなくて怖い」といった不安を抱える人も見かけます。

塩谷さん
「よく聞きますね。常連さんが怖いなとか、マナーやルールを知らなくて怒られたらどうしようとか、その気持ちはわかります。私も昔、怒られたことありますから(笑)。

でも、案外気にしなくても大丈夫です。一般的なマナーは、インターネットや本で情報を得られますし、その銭湯ごとの暗黙のルールとかも、意外と少ないですよ

銭湯初心者の人からしたら、常連さんの存在は少し怖く感じるかもしれません。でも、常連さんもまた、新顔がいたら不安を覚える人もいます。お互いのことを思いやって、相手の気持ちを想像しながら行動すれば、問題ありませんよ」

――最後に改めて、塩谷さんの感じる銭湯の魅力を教えてください。

塩谷さん
都市の中にある銭湯でも、数百円で行ける。この手軽さが、魅力の一つだと思います。数千円を支払うスーパー銭湯は『休みの日にお出かけする場所』というイメージがありますが、町の銭湯は、もっと身近なもの。でも、家風呂ほどは身近じゃない。その絶妙な距離感が好きなんです」

汗を流してさっぱりしたい! そんなときは、家のシャワーで済ますのでなく、たまには銭湯に足を運んでみませんか? 身体の芯から温まって、いつもよりも心身ともにリラックスできるはずです。

ライター:中込有紀
撮影:小野奈那子
撮影場所提供:金春湯
編集:ノオト

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