Vol.04陸上[後編]

酒井雷熙さん(14)千葉県柏市立田中中学校 陸上部所属美恵さん

「大人っぽいね」と言うと「本当はいたずら好きで子どもっぽいんですよ」と笑顔。肩の力が抜けた自然体の対応が、妙に大人っぽく感じさせる14歳は、陸上がとにかく楽しそう。「もっと上に行けるはず」。彼の心にあるそんな確信が見えるようです。それでいて目先のことに慌てず、遠くの着地点を見極めているような発言も。7mに迫る彼の跳躍のように、もっと遠く、もっと高く。持って生まれた才能を、焦らずに開花させて欲しいです。

イメージと身体が噛み合うときがたまらない。

陸上の練習は、平日は朝30分と夕方学校の部活で1時間。うちの学校はそんなに練習がキツくないので、自分にはちょっと足りない。なので、夕食後に1時間ほど自主練をします。自主練では、小学生の頃から通っているアスリート塾や選抜チームの合宿などで教わったメニューを繰り返しています。休みの日は今日みたいに、家族で陸上競技場に来て半日くらい練習する日もあります。

陸上をやっていると、自分のイメージと身体が噛み合ってしっくりくるときがあるんです。助走もしっかりできて、踏切のタイミングも決まって、気持ち良く高く跳べるとき。そんなときに、他のスポーツでは味わえない楽しさを感じます。それで、自己ベストが出たら最高ですね。終わったあとに「おめでとう!」って言ってもらえるのも嬉しいです。野球だと勝ったとしても“チームの勝利”だから嬉しさがちょっとぼやける。逆に、自分のエラーでみんなに迷惑をかけちゃったときとかすごくイヤだったけど、いまは自分の結果が出ないだけだから気が楽です。野球をやめて陸上をやってみて、個人競技のほうが合っているなと感じます。

雷熙さんとともに野球をやめて陸上に転向。同じ幅跳びを選んだ弟・風我さん。憧れのお兄ちゃんの背中を追いかけ続けている

身体が重いより軽い方が高く跳べるから、食べ物に気をつける。

陸上を始めて、自分でもかなり変わったなって思います。やる気も出たし、陸上は身体に向き合うスポーツだから、特にコンディショニングに対しての意識は高まりました。

身体が重いよりは軽い方が高く跳べると思うので、野球をしていたときはかなり食べていたんですが、いまはそんなに食べません。炭酸飲料やお菓子も控えるようになったのですが、今後はもっと勉強して試合当日の朝ごはんは「これにして」ってお母さんにリクエストできるようになりたいです。

好きなお弁当のメニューはハンバーグです。煮込みも好きだし、大根おろしもいいし、なめ茸がかかってるのも好き。大好きなので、自分にとっての勝負飯です。

お母さんのメッセージ入りご飯、最初は恥ずかしかったですが、いち選手として考えるといいなって思うようになったんですよね。競技場で力んでいるときにこれを見ると、なんかリラックスできるんですよ。だからいまでは「見てみて〜お疲れだって(笑)」と友達に見せたりして楽しんでいます。

部屋いっぱいに飾られた表彰状やメダル。陸上を始めて2年という短い間での実績だからこそ、彼の秘めたる可能性を感じさせられる

いつも仲のいい家族に見守られてきた。

将来の夢は、プロの陸上選手です。長く活躍するためにもケガをしたくないので、中学生のうちは筋肉をあまりつけすぎずに、いまの練習法だけで全国入賞を目指し、高校・大学で本格的なフィジカルのトレーニングをしていきたいです。東京オリンピックも憧れだけど、現実的にはその次かな。

うちの家族は、オープンで仲のいい家族。それが自分にも影響を与えていると思います。気軽に話せるし、いつも家族みんなで一緒にいるのが当たり前。休みの日に練習するときは、お母さんもお父さんも一緒になって幅跳びをしたり走ったり、楽しみながら協力してくれるんですよ。弟はかわいい存在。「ありがとう」と言われると癒されます(笑)。昔は一緒に野球をやっていたんですが、自分が陸上に転向するときに誘って、いまは一緒に幅跳びをしています。

いつもは優しい家族だけど、ダメなときはちゃんと叱ってくれるし、自分のことを本気で想ってくれているのが伝わってくる。普段はあまり口にしないけれど、いつも感謝しています。

お母さんのことを話すとき、ちょっとニヤっとしてしまうほど、雷熙さんにとって自慢のお母さん。男らしく、感謝のメッセージを綴る

※2017年2月 公開