vol.11ラグビー
[後編]

廣瀬雄也さん(18)東福岡高校ラグビー部所属道子さん

花園優勝6回、準優勝3回を誇り、ラグビー全日本代表選手も多く輩出している東福岡高校。選手たちは「全国制覇」を目指して質の高い練習を行っています。キャプテンとして、部員126人を束ねる廣瀬さんは高2でU17入りし、国際試合を多く経験。将来の夢は、父・友幸さんのようなトップリーガーになることだとか。5月に右肩を手術し長いリハビリ生活を経験しましたが、逆境がプレーヤーとしての強い心を育てました。花園予選を目前にし、スタメン復帰を目指す廣瀬さん。いまラグビーへの愛、そして家族への感謝であふれています。

6度の全国制覇。名門・東福岡で成長できた

「地元福岡で、一緒に世界一を取ってみないか?」。中学3年生のとき、東福岡高校の藤田雄一郎監督からそう声をかけてもらい、東福岡ラグビー部に入ることを決めました。福岡では毎年5月に「ワールドユース大会」という大きな世界大会があって、そこでニュージーランドや、南アフリカなど国内外の強豪校と試合をするんです。「地元で世界一か!」。親元を離れ、県外の高校に行くことも考えていましたが、心が動きました。東福岡は6度の花園優勝がある名門。そこで自分の力を試してみたいと思ったのです。

入学したてのころはパスができず、何もかもうまくいかなくてラグビーが嫌いになりそうでした。当時は細くて、体重72キロ。でもそこから家のご飯をいっぱい食べて、身体づくりをしていき、2年夏の菅平合宿ではタックルされても倒れない身体になりなりました。今は179センチ、92キロ。入学時から20キロも体重が増えたんです。この体重をキープしながら、筋力を上げていくのが秋の課題です。

自分の気持ちを確かめるように、言葉を選びながら丁寧に話す雄也さん。弟の幹太さん(中3)もラグビークラブで兄の背中を追いかけている

大きなケガ、手術。家族が支えてくれた。

練習は平日2時間半。選手たちが自分で考えて行動するのがヒガシの伝統になっていて、朝7時40分からの自主練習では個々の課題に合わせてみんな真剣にウエイトトレーニングをしています。通学に1時間ちょっとかかるので、起きるのは毎日5時。いつも早起きして弁当をつくってくれる母には感謝でいっぱいです。母の料理はどれも美味しくて、遠征などで家を離れると母のご飯が恋しくなります。

今年4月18日の招待試合で右肩を脱臼骨折してしまい、手術と入院を経験しました。ギプス生活は不自由だったし、全治7カ月と言われたときは、ショックと悔しさで本当に落ち込みました。そんなとき、黙って見守ってくれたのが家族でした。

元ラガーマンの父は、一緒にお風呂に入って身体を洗ってくれました。ときどき、弟と3人で入ってふざけ合ったりして、ケガの話はほとんどしなかったけど、何も言わなくても通じるものがありました。母も同じ。元ソフトボール選手ということで、ケガのつらさをわかってくれていたのだと思います。ケガから5カ月。ここまで前向きにリハビリに取り組めているのは、家族のおかげです。

名門・東福岡高校のセンター雄也さん。冷静な判断力を持ちプレースキックも得意。高2の花園では、勝利を引き寄せるコンバージョンキックを決め、チームを全国3位に導いた

15人の役割がすべて違う。ラグビーは奥が深い。

ラグビーは団体スポーツでは一番人数が多い、15人でやるスポーツです。15人もいるのに一人ひとりの役割が全て違って、奥が深いんです。僕はセンターというポジションなので、相手の間を抜く攻撃をしたり、トライ決めるのが仕事。身体の大きさを生かしたプレーができるとやりがいを感じます。キックとパスの精度をもっと上げて、花園予選ではチームの勝利に貢献できるよう、チームメートと一緒に頑張りたい。

共働きで忙しいなか、毎日サポートしてくれる父と母のためにも、ケガを早く治したい。11月にはスタメン復帰して元気にプレーする姿を家族に見せたいです。

取材中も家族への感謝の気持ちをストレートに口にする雄也さん。花園に向かって心から努力し続けた日々は、彼をひと回り大人に導いてくれた

※2019年9月 公開