15分の完全浴がオススメ! 不眠を改善するお風呂の入り方

寝付きが悪かったり、目覚めがすっきりしなかったり、眠りにまつわる不調を日々感じるのは辛いもの。「そんなときは、入浴方法を見直すだけで睡眠の質がグッとよくなるかも」。そう話すのは、眠りとお風呂の専門家・小林麻利子さん。小林さんが実践している「入浴ルーティーン」を教えていただきました。

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小林麻利子(こばやし・まりこ)

小林麻利子

こばやし・まりこ

眠りとお風呂の専門家。SleepLIVE(株)代表取締役。「美は自律神経を整えることから」を掲げ、科学的根拠のある最新データや研究を元に、睡眠に課題を抱える方へ入浴をはじめとした、マンツーマン指導を行う。実践的な指導が人気を呼び、2000名以上もの悩みを解決。また法人向けに従業員健康支援や、睡眠関連事業サポートのための顧問を行う。テレビやラジオ等多くのメディアでも活躍中。近著に『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン)など。
SleepLIVE:https://sleeplive.jp/

小林さんがオススメしているお風呂の入り方は、「40℃の湯船に15分、首までつかる完全浴」。 この入浴法でお風呂につかると睡眠が深くなるということですが、お風呂が睡眠の質を高める4つのポイントを教えていただきました。

小林さん
「人間の体温はだいたい朝4時が一番低く、19時頃に最も高くなるという一日の変動があります。睡眠に悩みがある方は、この高低差があまりないことが多いです。特に月経前の女性は高温期で体温が高く、寝るときにあまり下がりません。

しかし、40℃の湯船に15分、首までつかる完全浴で、体の内側の深部体温を0.5℃高めると、寝るときに体温が急降下して、ノンレム睡眠(深い眠り)の状態が増えることがわかっています」

小林さん
「手足を温めると、赤ちゃんは眠くなると言いますよね。これはDPG(ディスタル・プロキシマルグ・ラディエント)といって研究データも発表されていることですが、手足等の末端と胴体部分の皮膚温の差をできるだけ0に近づけると眠りが深くなります。

その状態を作るために、湯船につかって血流をアップし、冷えがちな末端を温めましょう。中心部の体温は末端に熱を奪われて下がるので、体温差が0に近づくのです。

注意点はせっかく温めた手足を冷やさないこと。40度のお湯に15分つかる際は、お風呂から出て1時間以内にはベッドに入るようにしましょう」

小林さん
「自律神経とは、体の血管や内臓などのはたらきをコントロールしている神経です。自律神経は暑いと血管を拡張して熱を逃し、寒いと血管を収縮して熱を閉じ込めますが、日頃から衣類での体温調節がうまくできていない人は、自律神経が体温調整のためにはたらきすぎて疲れてしまいます。この自律神経の乱れが、眠れなくなる一因に。

しかし、お風呂に入ることで自律神経の副交感神経が優位になって血流も良くなり、体がリラックスして眠りを誘うようになります」

小林さん
「自律神経は、脳の視床下部が司令塔として機能しています。この視床下部の前方にある視索前野の温度が高くなると、深い眠りに重要なデルタ波という脳波が増えることがアメリカの研究でわかっています。

シャワーではなく、湯船に首までつかる完全浴でしっかりと深部体温を上げることで、視索前野の温度は上昇しやすくなります」

眠りとお風呂の専門家として活躍する小林さんが「これを行うと絶対にぐっすりと眠れます!」と自信を持ち、実際にご自身も実践しているお風呂の入り方を伺いました。

  • 常温の水で水分補給をし、軽いストレッチを行う
  • 換気扇を切ってお湯を溜める。お湯の温度は40℃になるよう水温度計で確認(※1)
  • 高濃度の炭酸ガス系入浴剤を入れて溶かし切る
  • 洗い場に向けてシャワーを出しっ放し、浴室内の温度を上げる(※2)
  • 電気を消して、脱衣所の照明だけで浴室に入る

※1 換気扇を切るのは、冬や季節の変わり目で寒さを感じる場合に限る。ただし、入浴中に息苦しさを感じるようであれば、換気扇はつけておくこと
※2 夏など、浴室に入ったときに冷えを感じない場合は、このルーティンはスキップする

小林さん
「日本の浴室は暖房器具の設置率が低く、冬〜春にかけて浴室で寒さを感じやすいです。寒さを感じると交感神経が刺激され、血圧が上がります。血圧が上がるとコルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンが出ますし、お風呂に入るのが面倒などネガティブな気持ちが生まれがちになります。

そんなときは、浴室にシャワーを流してミストサウナ状態にし、ポカポカした空間を作りましょう。換気扇を切るのは、不必要な送風によって浴室とお湯の温度を下げないためです。さらに、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンを増やすためには、強い光は天敵。浴室の電気は消すか、光を抑えるのがオススメです」

  • 洗髪後、首とデコルテにマッサージオイルを塗る
  • お風呂に首までつかって、首とデコルテのリンパを流す(2〜3分)
  • 思いっきりボーッと脱力する(12〜13分)

小林さん
「長時間のPC作業をしたり、仕事で緊張したりして、多くの人は肩の周りが凝りがちです。オイルはお湯に溶けないので、首とデコルテに塗ってお風呂につかりながらマッサージをしましょう。私は、指先を肩甲骨の間から首を通って鎖骨にすべらせ、そのまま脇へと流しています。リンパを流せばデコルテがすっきりして、美容にも良いですよ。

マッサージの後は、とにかく体中の力を抜きましょう。湯船の縁の角の広くなった部分に後ろ頭まで預けると、頭が楽になります。さらに腕の力も抜いて浮力を感じさせ、口を開けて、舌は前から見たとき、うっすらと見える程度に前に出してください。

脱力しながらお風呂の温熱効果を感じていると、交感神経の刺激が低下し、幸福感が広がりますよ」

  • 浴室内で、体を軽く拭き、全身にオイルを塗る
  • 靴下をはき、下着をつける
  • 化粧水や乳液を塗りながらパジャマを着る
  • 目を閉じ、揺れながらドライヤーで髪を乾かす
  • そのままベッドへ

小林さん
「タオルや下着は、あらかじめ脱衣所に用意しておきましょう。体についた水分は蒸発する際に熱を奪ってしまうため、浴室にタオルを持ち込んで体を拭き、オイルで保湿してから脱衣所へ。

また、冷気は下に溜まりやすいので、冷えないように靴下をはいてから下着をつけます。私は化粧水を塗りながら下のパジャマを穿き、乳液を塗ってから、上のパジャマを着るというように、スキンケアと着替えを交互にしています。

ドライヤー時は目を閉じることで、癒し効果のあるアルファ波を分泌させます。さらに口を開けて舌も出し、体をゆらゆらと揺らして脱力すると、より体がリラックスしてよく眠れるようになります。髪が乾いたら、そのままベッドへ。靴下を脱いでから眠ります」

よく眠れるようになるお風呂の入り方を細かく教えていただきましたが、これを守るのが難しく思う人にも、「諦めずにぜひお風呂に入って欲しい」と小林さんは語ります。

小林さん
「例えば、スマホを見たくて入浴する時間がないという方もいますが、入らないよりお風呂に入ったほうが絶対にメリットは大きいので、スマホを持ってでも入って欲しいです。お風呂の後半に脱力する時間を少しでも作れるとよりいいですね。

ただ、15分の入浴時間は守って欲しいところ。個人差はありますが、一度上がった血圧は7分ほど経たなければ下がりません。20代を対象とした調査では、15分以上入浴した場合に血圧が高くなることがわかっています。血流も15分からはあまり上がらなくなり、肌も乾燥もするので、長時間の入浴はオススメしていません」

また、40℃のお風呂に15分つかるのが熱くて我慢できないという人は、もしかすると温度が間違っているか、平熱が低い人かもしれません。

小林さん
「湯船の温度を測ってみると40.8℃だったなど、微妙に温度が高いことがあります。0.8℃程度でも感じ方は変わるので、温度が不安なときは水温計を使ってみましょう。

睡眠の質を上げる最高の温度は40℃ですが、平熱が35℃台の方だと熱いと感じてしまうことがあるかもしれません。そういった方は3日間くらい39℃で全身浴をして、徐々に40℃に上げていけば体も慣れます。お風呂につかって深部体温を上げて眠る習慣をつけていれば、平熱も上がっていきますよ」

どうしても疲れていて、お風呂につかるのが億劫……。そんな日にオススメの「無理しない対処法」も教えてくれました。

小林さん
「シャンプーは翌朝に回して、夜はお湯につかるだけにするというのが、ひとつの方法です。睡眠時間が短くなるかもしれませんが、睡眠の質は上がるので、疲労回復のためにはお風呂に入る方が、効率が良いでしょう。

お風呂をわかすことすら面倒であれば、足湯だけでもいいので、とにかく寝る前に体の末端を温めてください。パジャマを着てすぐに眠れる状態にして、歯磨きをしながら足湯をして、すぐにベッドへ行くと眠りにつきやすくなりますよ」

ぐっすりと気持ちよく眠るために、ぜひ今日からでもお風呂に入る習慣をつけて、睡眠の質を高めていきましょう。

イラスト:すぎやままり
編集:ノオト

西田タニシ

西田タニシ

にしだ・たにし

おしゃれライター&編集者。ファッションから健康系まで20〜30代女性をターゲットに雑誌や書籍、Webメディアなどで元気に執筆中。

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