豚汁の味噌は2度溶き! 佐野みその噌ムリエ オススメの「ブレンド味噌」

たっぷりの野菜と豚肉をコトコト煮込む「豚汁」。食べごたえもあって旨味がぎゅっと集まった一杯には、どこかホッとするおいしさがあります。今回は、味噌専門店・佐野みその「噌ムリエ」に豚汁にぴったりなオススメ味噌を教えていただきました。

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ボリューム満点で、汁物なのにおかず感も味わえる「豚汁」。献立を考える余裕がない日も「豚汁さえあれば大丈夫!」という安心感がある、秋冬のありがたい存在です。一度にたっぷり作って、日に日に深まる味わいを楽しむご家庭も多いのでは。

我が家の豚汁は、大根とごぼうはマスト具材で、あとは家にある余り野菜を入れることもしばしば。里芋やレンコンを入れると食感が楽しくなるし、かぼちゃやさつまいもで優しい甘さが欲しくなるときもあれば、野菜よりもきのこをたっぷり入れる日もあります。

どんな具材を入れてもおいしくなってくれる豚汁。だからこそ、今回はそのまとめ役である「味噌」に注目! いつも同じ味噌を使っていたけれど、具材によって味噌を変えたらもっと豚汁のおいしさが広がるのでは? ということで、東京・亀戸の老舗味噌専門店「佐野みそ」を訪れました。

▲調味料好きにはたまらない空間…!

大きな樽がずらっと並ぶ「佐野みそ・亀戸本店」。全国各地から厳選した味噌の種類は、店舗奥に保管している味噌まであわせると、70種類以上とのこと! 

味噌のよい香りが鼻をくすぐる店内にて、笑顔で迎えてくれたのは、噌ムリエ(そムリエ=味噌のソムリエ)の高山あずささんです。

噌ムリエ歴8年になる高山さん
▲噌ムリエ歴8年になる高山さん
高山さん
高山さん

『噌ムリエ』は、佐野みそが独自に設けている社内資格。お店では、味噌についてのさまざまな知識を身につけたプロによるアドバイスを行っています。味噌についてわからないことは何でも聞いてくださいね!

ということで、まずは味噌の基礎知識から教えていただきましょう!

味噌は、麹の種類、大豆の加熱方法、塩の割合、熟成期間、気候風土、発酵熟成中に働く微生物の力などによって、多種多様な風味と味わいが生まれます。その原料は、大きく分けて3種類。

高山さん
高山さん

日本でもっともポピュラーなのは米味噌です。こちらの2種類の味噌をご覧ください。色はまったく違うのですが、実はどちらも『越後こめ糀 十麹』という米味噌なんです。

高山さん
高山さん

色が薄いものが3〜6か月熟成させた『白味噌』、濃いものが8か月〜1年ほど熟成させた『赤味噌』です。大豆に含まれるアミノ酸と糖が反応して褐色化するメイラード反応によって、熟成期間が長いほど色の濃さが増していくんですよ。一般的に、白味噌は甘みが感じられ、赤味噌になるほどコクが深まるのでお好みで使い分けるのがオススメ。白味噌と赤味噌の中間の味噌は、『淡色味噌』といって、スーパーなどでよく見かけるタイプになります。

味噌の種類や赤白の違いがわかったところで、ずばり豚汁にぴったりな味噌をお伺いすると……。

高山さん
高山さん

どの味噌でもおいしくできると思いますが、しいて言うなら1種類の味噌ではなく、複数の味噌を混ぜ合わせると、豚汁のおいしい発見があるかも知れません! テイスティングして気になった味噌をいくつか用意してもいいですし、最初からブレンドされた味噌を選んでもいいと思います。どの料理にどの味噌が正解、ということはありませんから。

ということで、高山さんにオススメの2つのブレンド味噌を教えていただきました。

まずは、「手前自慢(中甘)」です。

高山さん
高山さん

4種の味噌をオリジナルブレンドした味噌です。白味噌のまろやかさと、赤味噌のコクがどちらも楽しめるので、具沢山の豚汁のまとめ役にぴったりですよ。かつお、昆布、煮干し、あごだしなど幅広いだしとの相性も抜群です。

次に紹介いただいたのは、「神代みそ(赤・中辛)」。

高山さん
高山さん

国産大豆、国産米で天然成熟した味噌を佐野伝統の合わせ法でブレンドした味噌になります。コクがありながらも、さっぱりとした風味が特徴です。野菜や豚肉はもちろん、豆腐や油揚げの味を引き立ててくれますよ。

ブレンド味噌も魅力的だけど、「すでに家にある淡色味噌にプラスアルファできる味噌が知りたい!」という場合は、甘みがあって塩分が控えめな「白味噌」や「麦味噌」が相性◎とのこと。

高山さんのイチオシは、四国産の裸大麦を通常の4倍と贅沢に使った麦味噌「薩摩みそ 櫻島(甘口)」。

高山さん
高山さん

九州産の大豆を自然塩で仕込んでいて、麦麹の甘みと深い香りが楽しめます。カボチャ、さつまいも、かぶ、白菜など甘みのある野菜にぜひ合わせてみてください。櫻島をベースにする場合は、先ほどご紹介した『神代みそ(赤)』をちょい足しするのもおいしいですよ。

甘く優しい味わいのものとは違って、きのこなど、単体でもしっかりした旨味のある個性の強い食材を味わいたいときのオススメは、「金亀子みそ赤(中甘)」なんだとか。

高山さん
高山さん

こちらは、当店の不動の人気 No.1味噌です。新潟産のもち米をふんだんに使った味噌で、自然な甘みと大豆の旨味のバランスがとても優れているのが特徴です。きのこなど、個性の強い具材にも負けない味わいがあります。豚汁はもちろん、そのまま旬の野菜につけたり、味噌おむすびで食べたりするのもおいしいですよ。

2種類の味噌を組み合わせたり、具材によって味噌を使い分けたり、想像以上に自由なおいしさが楽しめそうな豚汁の世界……。豚汁をつくるとき、高山さんはどんなことに気をつけているのでしょうか?

高山さん
高山さん

沸騰した鍋に味噌を溶き入れると、せっかくの風味が飛んでしまうのでもったいないです。豚汁は、だし汁と具材を煮込み始めるタイミングで“少量の味噌”を加えるのがポイント。そのまま優しくコトコト煮込むと、具材にしっかりと味噌の風味がつきますよ。すべての具材に火が通ったら、残りの味噌を風味付けの仕上げ用として溶かしてくださいね。

200gミニ味噌パック
▲200gミニ味噌パックはオンラインショップでも購入できる

料理での使い方だけでなく、日頃の保存方法によっても、味噌の風味は大きく変わります。購入時の風味をなるべくキープしたいならば、「冷凍もしくは冷蔵保存が基本」とのこと。

高山さん
高山さん

味噌は常温保存だと熟成が進んでしまうので、なるべく冷凍庫か冷蔵庫で保存するのが好ましいです。味噌は冷凍してもカチコチに凍らずにシャーベット状になるので、そのままお玉ですくえます。味噌の表面はラップをして、乾燥を防いであげましょう。

数種類の味噌を具材やその日の気分によってブレンドしてみると、作り慣れた豚汁もまた違うおいしさが生まれるかも。温かい豚汁に、からだも心も温めてもらいたい季節はまだまだ続きます。

具材はもちろん、味噌のバリエーションも楽しみながら、究極の豚汁を追求してみてはいかがでしょうか。

取材・執筆:関あやか(ノオト)
撮影:小野奈那子
編集:ノオト

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