どうしたら、家庭から出る「生ごみ」を減らせる? 暮らしを見直す一工夫
家庭で調理をすると、少なからず出てしまうのが、野菜くずなどの「生ごみ」。もう少し減らせたらいいのに、もっと気持ちよく処理できたらいいのに、などと思ったことはありませんか? 今回はコンポストアドバイザー・鴨志田純さんに、家庭から出る生ごみを減らす工夫を伺います。
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鴨志田純
(かもしだ・じゅん)
鴨志田農園園主。コンポストアドバイザー。1986年東京都三鷹市生まれ、元数学教員。ネパールや全国各地で生ごみの堆肥化や有機農業の仕組みづくりを実践中。農林水産省・消費者庁・環境省主宰「サステナアワード2020」では「環境省環境経済課長賞」を、「ポケマルチャレンジャーアワード2021〜課題に立ち向かう生産者たち〜」では最優秀賞を受賞している。
鴨志田農園Instagram:@kamoshida_farm
冷蔵庫の中にしなびた野菜や賞味期限切れの食材があると、ガッカリした気持ちになりますよね。誰でも買い物中に「お買い得だから」「おいしそうだから」とつい手が伸びてしまったものの、上手に使い切れなくて食材を破棄してしまった経験があるのでは?
鴨志田さん
「生ごみを減らすために、まずは必要以上に食材を買い込まないことが大切です。大量生産・大量消費の時代を生きてきた私たちが、食材の一部を“生ごみとして捨てる”ようになったのは、ここ最近のこと。買い物をする時は、自分の家庭で使い切れる食材の量を把握し、なるべく無駄にすることなく、最後までおいしく食べきれそうかを意識してみましょう」
鴨志田さんによると、多くの人が当たり前のように捨ててしまっている野菜の種や皮も、実は食べられるものも少なくないのだとか。鴨志田農園のInstagramアカウント(@kamoshida_farm)には、野菜を丸ごと使ったおいしそうな料理が並びます。
鴨志田さん
「野菜の種や皮って、実は食べられるものも多いんですよ。大根やにんじんなども、土汚れを落としたらぜひ皮付き食べてみてください。私のお気に入りの丸ごと野菜レシピは、「甘長唐辛子のジリジリ焼き」。油を引いたフライパンに甘長唐辛子を丸ごと入れ、重りを乗せて両面を弱火でじっくり焼き、塩をかけて食べるんです。甘長唐辛子の種やヘタは捨ててしまう人が多いかもしれませんが、このレシピで食べてみると絶品です。同じ手順で作るピーマンのジリジリ焼きもおいしいですよ」
「あとは新生姜の根っこで炊き込みご飯を作ったり、里芋の皮をオーブンでパリパリに焼いたり、小玉じゃがいもを皮のままグリルするだけでも、とてもおいしいです。弱火でじっくり火を通した野菜は味が引き立っているから、味付けはシンプルでOK。ちょっといい塩や醤油があれば、それだけで贅沢な一皿が楽しめますよ」
どうしても食べるのが難しい玉ねぎの皮や根、トマトのヘタやネギの青くて硬い部分などは、野菜だしの「ベジブロス」の材料として活用するのもおすすめです。なんとなく捨てていた野菜の一部も上手に使いきる工夫さえ知っていれば、生ごみを減らす一歩になりますね。
環境省の発表によると、2020年度、日本の一般家庭からは約247万トンの食品ロスが発生したと推計されています。また、生ごみに含まれる水分量は約8割になることも。一般家庭から出る生ごみの水分量が多くなると、ごみ処理場での焼却処理に時間がかかり、助燃剤の量が増えてしまいます。つまり水分を含んだ生ごみを捨てることは、二酸化炭素を多く排出する原因にもつながっているのです。
鴨志田さん
「水分を含んでしまった野菜くずは新聞紙に包んで、ギュっと絞るだけでも水分量を減らせます。野菜くずを三角コーナーなどの水回りに放置しておくと、水分と養分によって腐敗が進み、生ごみ独特の嫌なニオイを発生させます。冷蔵庫に入れておけば腐敗は抑えられるので、まとめてタッパーなどに入れて、可燃ごみの日まで冷蔵庫で保管するのもおすすめです。これなら、嫌なニオイが出てくる心配もありません」
鴨志田さん
「さらに頑張れそうなら、野菜くずなどを天日干しして乾燥させてみましょう。タッパーに入れておいた野菜くずを新聞紙に包み、晴れた日に洗濯物を干す感覚で干します。日中の数時間だけでも野菜くずの中にある水分が飛んでいくので、濡れた生ごみを減らすことができますよ」
最近は家庭用の生ごみ乾燥機も見かけるようになりました。数時間で乾燥できるので、時間がない方におすすめです。しかし家庭用でも数万円以上する高価な機械なので、まずはベランダや庭で乾燥させてみて、それが手間と感じるのであれば、購入を検討してみるのも良いかもしれません。
コロナ禍で家庭菜園に注目が集まり、家庭でコンポストを利用する人が増えています。段ボールや小さなトートバッグでできるもの、地域共同で使うコンポストなど種類も豊富です。家庭菜園を楽しむ方や、お庭がある方なら手軽に楽しめるコンポストを選ぶのも良いでしょう。
鴨志田さん
「コンポストは野菜くずだけでなく、食べ残しや卵の殻なども入れられます。まずは自分に無理のない範囲で小さく楽しく始めてもいいですよね。また、各家庭でのコンポストを利用するだけではなく、共同管理できるコミュニティに参加するのもおすすめです。地域支援型農業(※CSA)などでコンポストや循環に興味関心のある農家さんと繋がりがもてると、堆肥のことだけでなく、どんな思いで野菜を育てているか、どんな条件でおいしい野菜が作れるかまで教えてくれるはずです。野菜作りの現場を知ることで、毎日食べる野菜のありがたさや購入する動機も変わってくるでしょう」
(※)参加会員が農家に購入費用を前払いして、定期的に農作物を受け取ることができるシステム
生ゴミを減らそう! と我慢や無理をするのではなく、ささやかでも今日できることから始めてみる気持ちが大切です。ちょっとの工夫が地球にやさしい行動につながっていると思うと、なんだかやる気もわいてきます。
鴨志田さん
「日本中の家庭で、1週間100gでも生ごみを減らすことができれば、それは大きなソーシャルインパクトになります。1人の一歩より、100人の一歩。1人ひとりが小さなアクションを起こすことで、世の中の価値観を変えられるかもしれません。私たちは1日3回何を食べるかで、社会を3回変える権利を有しています。それは、どんな生ごみを出すかとも言えるはず。ちょっとの工夫で、家庭から出る生ごみを減らすことができるかもしれません。何より大事なのは、楽しいとかおいしいとか自分の喜びになること。
無理なくできるところから始めてみましょう」
執筆:つるたちかこ
イラスト:あなんよーこ
編集:ノオト
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