中国の「春節」って何を食べるの?料理家のパン・ウェイさんに聞く旧正月のお祝い料理
中国などアジア圏では旧暦のお正月(春節)に新年を盛大にお祝いします。日本ではお正月におせちやお雑煮を食べますが、中国の旧正月にはどんなものを食べるのでしょうか?中国・北京出身の料理家、パン・ウェイさんに、新年のお祝い料理や過ごし方を伺いました。身近な材料で作れるレシピ付きです!
この記事をシェアする
パン・ウェイ
中国・北京生まれの料理研究家。「今日の食は、5年後のからだのために」をモットーに、旬の食材をふんだんに使い、おいしくて身体に優しい中国の家庭料理を提案。東京・代々木公園スタジオにて料理教室を主宰するほか、NHK「きょうの料理」等のテレビ出演や著作活動、企業向けのレシピ開発やコンサルタントとしても活躍中。
公式Webサイト:https://www.pan-chan.com/index.html
日本では毎月1月1日が新年の始まりですが、中国を始めとするアジア圏では旧暦でお正月をお祝いします。2024年の旧正月は2月10日(土)。中国ではこの時期を「春節」と呼び、その前後8日間ほどが連休になるそう。
パンさんは中国・北京出身ですが、中国のご家庭では春節をどのように過ごすのでしょうか?
日本の新年と同じように、中国でも春節に合わせて実家に帰省し、家族で年末年始を過ごします。中国伝統の図柄をもとにした「切り紙」を窓に飾って年越しの準備をし、旧正月を迎えた瞬間に魔除けとして爆竹を鳴らすんです。中国は広いので地域ごとでさまざまな特色がありますが、食卓には縁起物のお料理もたくさん並びますよ!
春節の様子は日本でもよくニュースで取り上げられていますよね!日本は新暦で考えるので1月1日が元日になりますが、中国では1月1日に特別なことはしないんでしょうか?
新暦の1月1日は祝日にはなっていますが、一般的な休日と変わらないですね。中国では旧暦でのお正月に重きを置いているので、新暦では特別なことは何もしないです。
そうなんですね!地域ごとに料理も変わりそうですが、中国全土で親しまれている「お正月ならではの料理」というと、どんなものが挙げられますか?
丸ごとの魚を使った一品料理「年年有魚(有余/ねんねんゆうぎょ)」は地域問わず広く食べられていますね。中国語で「魚」は余裕の「余」と同じ発音なので縁起が良いとされています。「余裕のある1年が過ごせますように」という意味が込められているんですね。海岸部では海魚の鯛など、内陸部では川魚の鯉などがよく使われます。
では逆に北部・南部など、地域ごとではどう変わるんでしょうか?
私の故郷である北京など、中国北部では小麦の生産量が多いので餃子が定番ですね。皮から手作りし、家族総出で前日から包むご家庭も多いです。具材も大晦日は野菜だけを使ったもの、元日は逆に羊や豚肉などお肉だけのものを食べます。大晦日にあえてお肉を食べないことで、神様やご先祖様に今年1年の感謝の気持ちを伝えるんです。ちなみに中国では水餃子が一般的。焼き餃子は水餃子のリメイクのような位置づけなので、おめでたい席では食卓にのぼりません。
逆に南部ではお米やお餅を使った料理がポピュラーです。代表的なのは「湯円(タンユェン)」という白玉団子のスープで、豚肉で作った餡などが入っています。また、「年糕(ニェンガオ)」という平べったいお餅もお祝い料理として出されますね。
「春巻」も中国の代表的な料理ですが、旧正月では食べないんでしょうか?
焼き餃子と同じように春巻も残り物を包むことが多いので、お祝い料理としては食卓に出ないですね……。もし出されたとしたら「もう料理はこれしかないの、早く帰って」という失礼な意味になってしまいますから(苦笑)
中国で親しまれているお正月料理「年年有魚(ねんねんゆうぎょ)」。今回は日本でも手に入りやすい鯛を使います。フライパンで簡単に作れますよ!
- 鯛 1尾(約20㎝、300g程度のもの)
- 長ねぎ 10cm(20g/臭み取り用)
- しょうが(薄切り) 10g
- 紹興酒 大さじ1
- 長ねぎ 15cm(30g/白髪ねぎ用)
- 【A】ピーマン 1/3個(10g)
- 【A】赤ピーマン 1/6個(5g)
- 【B】鯛の蒸し汁 大 さじ3
- 【B】醤油 大さじ4
- 【B】砂糖 小さじ2
- 【B】鶏がらスープの素(顆粒) 小さじ2/3
- サラダ油 大さじ2
鯛はうろこや内臓を取り除いておきましょう。スーパーで下処理済みのものを購入してもいいですし、鯛やスズキ、キンメダイなどの切り身でも代用可能です。
・フライパンに入る大きさの耐熱皿を2枚用意する。
・クッキングシートを30㎝四方に2枚切っておく。
【1】 長ねぎ(10㎝)は、半分の長さに切ってから縦半分に切る。ボウルに入れ、しょうが(薄切り)、紹興酒を加えて約3分間漬ける。
【2】 鯛の両面に包丁で6cm程度の長さの切り込みを2本ずつ入れ、【1】を挟む。クッキングシートを敷いた耐熱皿にのせ、ボウルに残った紹興酒を全体にかける。
【3】 フライパンにクッキングシートを敷き、耐熱皿を逆さに置く。その上に【2】をのせる。フライパンに水(分量外:700ml)を注ぎ、フタをして中火で約12分間蒸す。蒸し上がったら長ねぎとしょうがを取りのぞく。
蒸気が入り過ぎると煮魚のような仕上がりになってしまうので、耐熱皿を逆さに重ねて高さを出します。フライパンに傷がつかないよう、クッキングシートを敷いてくださいね。
【4】 鯛を蒸している間にトッピングとタレを作ります。長ねぎ(15㎝)は千切りにして白髪ねぎを作る。同様にAも千切りにし、耐熱ボウルに入れる。小鍋で熱したサラダ油を上からまんべんなくかける。
白髪ねぎを作る時は、ねぎの白い部分と芯とを分けると千切りしやすいです。お店では白い部分しか使いませんが、もったいないので、家庭で食べる時は芯も千切りにして加えてしまいましょう!
サラダ油は鉄鍋など熱に強い素材の小鍋で温めてくださいね。水気は必ずふき取りましょう。横から見た時に白い煙が少し出てきたくらいまで加熱するのが目安です。
【5】 先ほど使用した小鍋にBを入れ、2/3程度の料理になるまで煮詰めたら【4】に加える。
【6】 器に【3】をのせ、【5】をかける。(タレの量は好みで調整する)。
鯛の上に白髪ねぎを並べ、その上にピーマンをのせてからタレをかけると美しく盛り付けられますよ。
鯛を丸ごと一尾使った、お祝いらしい豪華な料理が完成しました!ほんのり甘く、ふっくらとした鯛の身に、シャキシャキ食感のねぎやピーマンがよく合います。熱した油をかけたからこそ、ねぎの香りや食感が引き立っているんですね。鯛の煮汁を加えたタレはあとをひくおいしさで、ごはんにもかけたくなっちゃうおいしさです。
「豪華だけど工程は意外と簡単でしょ?」とパンさん。中国では母親が他のお祝い料理にかかりきりになっている間、父親が調理することもあるそう。「材料のお酒は日本酒でもいいですが、中国らしさを味わうならぜひ紹興酒を使ってみて」とも言います。
日本のお正月とは時期が異なりますが、新年を盛大にお祝いし、良い年にしたいと願う気持ちは同じですね。お正月らしい華やかな魚料理。春節に合わせ、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。
撮影:山下コウ太
編集:Nadia
執筆:田窪 綾
調理師免許を持つフリーライター。惣菜店やレストランで8年ほど勤務経験あり。食分野を中心に、Webや雑誌で取材やインタビュー記事作成などを行っている。
この記事をシェアする