スープジャーで世界一周 -「花嫁のスープ」の秘密(トルコ)-
忙しい毎日。朝起きて、家事や仕事に追われるうちに、気がつけばもう夕方。 どこか遠くへ旅に出たい! なんて思う日もありますが、残念ながらそう簡単に飛び出すわけにはいきません。 それならせめて気持ちだけでも広い世界を味わいたいもの。 ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識と共にご紹介します。 スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、旅してみませんか?
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ヨーロッパとアジアの中間に位置する国、トルコ。
黒海と地中海、エーゲ海に面し、その地政的な強みを活かして古くから交通・交易の要衝として栄えてきた歴史を持ちます。今回ご紹介するスープの主役は、そのトルコに伝わった豆、レンズ豆。メソポタミア原産と言われますが、今では家庭料理の食材として広く親しまれています。では、スープのお話をする前に、しばしトルコの旅をお楽しみください。
トルコというと皆さんは何をイメージしますか? 日本でもすっかりポピュラーになったケバブでしょうか? クロワッサンでしょうか? クロワッサンはフランス語で三日月の意味。17世紀後半にヨーロッパに攻めてきたオスマントルコ軍を撃退した記念に、トルコ軍の旗に描かれた三日月をかたどってパンを作ったことがその由来と言います。
ほかにも、「トルコ」という名がそのままついた宝石、トルコ石を思い浮かべる方も多いでしょう。
トルコ石の青い色、ターコイズブルーの魅力もはかり知れません。
ブルーと言えば、「ブルーモスク」と呼ばれるスルタンアフメト・モスクも有名です。
イスタンブール歴史地域にこのモスクが建てられたのは、オスマン帝国時代のこと。13世紀末にオスマン1世によって建国された帝国は、最盛期にはヨーロッパからアジア、アフリカの一部まで勢力を拡大した超大国でした。スルタン(君主)であるオスマン家がイスラム教を信仰していたため、トルコ各地にモスク(寺院)が建てられたのです。
2万枚以上の美しいタイルが敷き詰められた内部は壮麗にして絢爛!
万華鏡のようなステンドグラスが、モスク内部を神々しい光で包みます。
ブルーつながりでもうひとつ、景勝地をご紹介。「パムッカレ」はご存じ、アナトリア高原の西部に位置し、石灰石の棚が織りなす段丘のこと。段丘の一番上にあるヒエラポリス遺跡には、ローマ帝国時代の浴場もあり、温泉保養地として栄えたことがうかがえます。
さて、いよいよトルコ料理のお話です。
フランス料理、中華料理と並んで世界三大料理と言われるトルコ料理。その背景にはやはりオスマン帝国時代の宮廷料理の存在があると考えられます。広大な領土を支配したスルタンが各地から名物を取り寄せ、豪勢な食文化として発展していったのでしょう。
今回ご紹介する「花嫁のスープ」は、トルコの家庭料理のひとつ。
この名前は、病に臥せっている義理の父親のためにお嫁さんが作ってあげたというところから来ています。それが評判となり、やがて嫁ぎ先の家族とうまくいくように、母親が娘に作り方を教えるようになったそう。古今東西、花嫁となる娘を気遣う母親の愛情は変わらないんですね。
メインの食材はレンズ豆です。
レンズ豆のほかに入れるのは、お米や、「ブルグル」と呼ばれる割り麦などの穀物類。ここではお米を使うことにしました。
スープ全体にとろみがついたところで、スパイスとミントをちょっぴり投入、そして決め手は最後のレモン汁。まろやかな中にも異国の香りが混ざり、飲むほどに味覚が刺激されます。
トルコ風の平たいパンを傍らに、たとえ花嫁でなくても「花嫁のスープ」を作って召し上がれ!
- レンズ豆(皮なし) 大さじ2(約30g)
- 米 大さじ1(約15g)
- 玉ねぎ 1/4個
- にんにく 1片
- トマトペースト 大さじ1
- バター 10g
- カイエンペッパー(粉唐辛子) 小さじ1/2程度(お好みで)
- パプリカパウダー 小さじ1/2
- クミン(ホールでもパウダーでも) 少々
- チキンスープ 500ml
- 塩・こしょう 各少々
- ドライミント 少々
- レモン汁 小さじ1
スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。
1.玉ねぎ、にんにくをそれぞれみじん切りにする。
2.鍋にバターを入れて弱めの中火で熱し、溶けたら玉ねぎとにんにくを加えて透明になるまで炒める。
3.トマトペースト、カイエンペッパー、パプリカパウダー、クミンを入れ、混ざったらレンズ豆と米を加えさらに軽く炒める。
4.チキンスープを加え、軽くふつふつと煮たてながら15分程度、レンズ豆が崩れてくるまで煮る。
5.塩・こしょうで味を調え、ドライミントを加えたらスープジャーに入れる。レモン汁をかけ、お好みでパプリカパウダー(分量外)を一振りして完成。
※保温後は6時間以内に一度にお召し上がりください。
ライター:松下梨花子
編集:オフィス福永
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