スープジャーで世界一周 -蒸し暑い季節におすすめ、トムヤムクン(タイ)-

忙しい毎日。朝起きて、家事や仕事に追われるうちに、気がつけばもう夕方。 どこか遠くへ旅に出たい! なんて思う日もありますが、残念ながらそう簡単に飛び出すわけにはいきません。 それならせめて気持ちだけでも広い世界を味わいたいもの。 ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識と共にご紹介します。 スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、旅してみませんか?

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梅雨の季節。
雨の匂いには生命力を感じるけれど、降り続くとジメジメ、どんよりした気持ちになってしまいます。そんなときにおすすめしたいのは、ムシムシした空気を吹き飛ばしてくれるタイのスープ、トムヤムクンです。
酸っぱくて辛いスープは、梅雨の季節の清涼剤。パンチがきいたエスニックスープで雨の日をスカッと乗りきりましょう!

東南アジアの国々のなかで、タイは比較的日本人になじみのある国ではないでしょうか。
水上マーケットや仏教遺跡、煌びやかな舞踊、プーケット島の美しいビーチなど、訪れたくなる観光名所は尽きません。

でも今回は場所ではなく、エスニックな香りがいざなう食の旅にご案内します。

タイのお正月「ソンクラーン」の時期に食べられるのがカオチェー。

カオチェーとは、ていねいに水洗いしたご飯に、ジャスミンの花の香りを移した「ジャスミンウォーター」を注ぎ、氷を浮かべたもの。いわば「冷水茶漬け」とでも言うべき食べ物です。

日本と違い、タイのお正月は4月の暑い時期に祝うもの。涼しげで香り高いカオチェーは、たくさんのおかずと共に食されるお節料理の一つです。
もともとは宮廷料理で、昔、ビルマ(現ミャンマー)から嫁入りしたお姫様が、暑さで食欲がない王様のために食膳に出したものだとか。

タイの人々はジャスミンが大好き。
純白の花で作った花飾り「マーライ」は、ソンクラーンを始めとするお祝い事や冠婚葬祭、お供え物などに幅広く使われます。また、8月12日のタイの「母の日」には、お母さんに贈る花として人気があるそう。

バンコクの市場ではマーライを売るお店があり、甘い濃厚な香りが立ちこめています。

タイ料理といえばパクチーの香りを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
英語名でコリアンダー、中国では「香菜(シャンツァイ)」と言われる、エスニック料理に欠かせないセリ科の食材です。
パクチーの独特で強烈な香りは、苦手だという人もいるでしょうが、一度ハマると「なくてはならない存在」となる魅力をそなえています。

パクチーの他にも、タイ料理に欠かせない香味野菜はたくさんあります。

コブミカンの葉「バイマックルー」や、小さな赤玉ねぎ「ホムデーン」、香りの強いしょうが「カー」、激辛と言われる唐辛子「プリッキヌー」などなど。

名前だけではピンとこないかもしれませんが、嗅いでみると「ああ、タイ料理のレストランの匂い!」とすぐわかる、おなじみのものばかり。最近はエスニック料理の食材を扱うお店も増えているので、見かけたら手に取って、くんくん匂いを嗅いでみてくださいね。

2021年3月、タイ政府は「トムヤムクン」をユネスコの無形文化遺産の候補として推薦すると閣議決定しました。
推薦の理由には、川や運河に面した代表的な農村地帯の生活様式を反映していること、生活に根ざしたさまざまなハーブ(香味野菜)が用いられていることなどが挙げられています。

今回は、日本でも比較的手に入りやすいバイマックルー、レモングラス、パクチーの3種類を使ってトムヤムクンを作ります。

▲バイマックルー(コブミカンの葉)
実の表面に「こぶ」のような凹凸がある

▲レモングラス
葉はハーブティにも使われ、リラックス効果も

▲パクチー(コリアンダー)
独特の香りが食欲を増進させる

バイマックルーはコブミカンの葉のこと、レモングラスはその名のとおりレモンを思わせる爽やかなシトラス系の香りを放つ野菜で、それぞれスープの味を引き立ててくれます。
パクチーは、葉や茎はもちろん根もハーブとして使われます。加熱すると香りが立つので、根はスープに入れて煮だしましょう。

トムヤムクンには、ココナツミルクや牛乳を入れたマイルドな「トムヤムクン・ナームコン」と、入れないで作る「トムヤムクン・ナームサーイ」の2種類があります。
ここでは、すっきりした味のトムヤムクン・ナームサーイの作りかたを紹介します。

  • エビ(殻付き・できれば頭付き) 3尾
  • しめじ 1/4パック(25g程度)
  • ミニトマト 2個
  • しょうが(皮付き薄切り) 3枚
  • バイマックルー 2枚
  • レモングラス(根本に近い部分) 1本
  • パクチーの根
    (なければコリアンダーパウダー少々) 1本分
  • 唐辛子 1~2本(お好みで)
  • 水 350ml
  • 【A】
    • 鶏ガラスープの素 小さじ2/3
    • ナンプラー 小さじ2/3
    • 砂糖 ひとつまみ
  • レモン汁 大さじ2程度(お好みで)
  • パクチーの葉と茎 1本程度(お好みで)

スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。

1.エビの頭を取って殻をむき、背わたを除く。頭と殻は後で使うのでとっておく。
2.しめじは石づきを除いて小房に分け、ミニトマトはヘタを取る。バイマックルーは葉脈を引っ張って外し、レモングラスは縦を半分、長さを2~3等分に切る。パクチーの根は包丁の腹で軽く潰し、パクチーの葉と茎は細かく刻む。
3.1でとっておいたエビの頭と殻を鍋に入れ、中火で香りが立つまで乾煎りする。
4.3の鍋に水を加え、軽く煮立ったところで頭と殻を除く。そこにレモングラス、パクチーの根、しょうが、唐辛子を入れ、Aを加える。
5.再度煮立ったらしめじ、エビの身、バイマックルーを入れ、エビに火が通ったらミニトマトとレモン汁を加える。ひと混ぜして火を止め、レモングラス、パクチーの根、しょうが、唐辛子、バイマックルーを除く。
6. スープジャーに注ぎ、パクチーの葉と茎を散らして完成。

※保温後は6時間以内に一度にお召し上がりください。

ライター:松下梨花子
スープの撮影:土肥裕司
編集:オフィス福永

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