スープジャーで世界一周 -ラムによく合う!クマラスープ(ニュージーランド)-

忙しい毎日。朝起きて、家事や仕事に追われるうちに、気がつけばもう夕方。どこか遠くへ旅に出たい! なんて思う日もありますが、残念ながらそう簡単に飛び出すわけにはいきません。それならせめて気持ちだけでも広い世界を味わいたいもの。ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識と共にご紹介します。スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、旅してみませんか?

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今回取り上げるのは、ニュージーランド料理のクマラスープです。
ニュージーランドといえばまず思い浮かぶのが「羊の国」というイメージ。

ニュージーランドの人口は約511万人。対して羊の数は約2千7百万頭で、ざっと計算しても人口の5倍以上の数の羊がいることになります。
でも、これでもニュージーランドの羊の生産数は近年、減少傾向にあるそう。今より人口の少なかった1980年には、7千万頭近くの羊がいたというのですから驚きです!

ちなみに2019年の統計では、世界で最も羊の数が多い国は中国で、その数は1億6千万頭以上といいます。しかし、人口1人あたりの数は約0.1頭。では日本はどうかというと、約1万6千頭の羊がいて、人口1人あたりの羊の数は0.0001頭です。
こう考えると、ニュージーランドはたしかに羊王国ですね!

20世紀を代表するファンタジー小説『指輪物語』(J・R・R・トールキン作)を映画化した『ロード・オブ・ザ・リング』の撮影地が、ニュージーランドなのをご存じですか?
壮大なスケールで描かれたこの映画は大自然の魅力に溢れ、公開後はロケ地を巡るツアーも組まれています。

とりわけ有名なのがホビットたちの暮らす村、「ホビット庄」。ロケ地の中で唯一、撮影当時のセットが残されている場所です。
ニュージーランド北島部の都市オークランドから約2時間のドライブで行けるため日帰りツアーも可能。人気の観光地になっています。

また、冥王サウロンの本拠地・モルドールのロケ地となったトンガリロ国立公園も見ごたえ満点です。園内には3つの火山がそびえ、一帯は火山活動によってつくられたクレーターや湖があり、奇観が楽しめるトレッキングコースが用意されています。
指輪を葬った「滅びの山」もこの火山の迫力を活かして撮影されました。

実は、トンガリロはもともと先住民族であるマオリ人の聖地として神聖視されていました。国立公園に指定されたきっかけは、乱開発されることを危惧したマオリの人々が土地を国に寄進して保全と管理を求めたため。美しい景観のみならず、聖地としての希少性も高まったことで、現在では世界複合遺産に指定されています。

ニュージーランドが誇る世界的なスポーツ、ラグビーにも触れておきましょう。
第1回ラグビー・ワールドカップが開かれたのは1987年。その開催地はニュージーランドでした。代表チーム「オールブラックス」は見事、初代チャンピオンに輝きました。
その強さはラグビーファンならずとも周知のとおりで、2011年、2015年のワールドカップで優勝。世界ランキングでも1位に君臨しています。

オールブラックスといえば、試合前のパフォーマンス「ハカ」が有名です。ハカは、もともとマオリの踊りで、それぞれの部族の誇りや結束を鼓舞するために行われてきたもの。オールブラックスの力強いパフォーマンスは、プレー前からもう始まっているのです。

マオリは、ニュージーランドの先住民族。14世紀ごろ、伝説の島「ハワイキ」から帆船を連ねて出航、ニュージーランドにたどり着いたといわれ、現在も人口の約16%を占めています。

前述したトンガリロ国立公園を擁するロトルアは、マオリの主要部族、テ・アラワ族の本拠地でした。今でもその子孫たちが多く暮らし、テ・プイア・マオリカルチャーセンターでは伝統舞踊「ハカ」や「ポイ」、歌唱「ワイアタ」の実演が行われています。
また、ニュージーランド・マオリ美術工芸学校では、木や翡翠に民族模様を彫り込むカービングなどの伝統工芸を見学することができます。

マオリの伝統料理のひとつが、地熱を利用してつくる「ハンギ」です。
地面に掘った穴に焼き石を敷き詰め、そこに植物の葉で包んだ食材を入れて蒸し焼きにします。現代では、葉の代わりに金属のかごやアルミホイルで食材を包んで蒸し上げる方法もあります。

魚や野菜などさまざまな具材を使うハンギですが、定番の食材が「クマラ」です。
クマラとは、ニュージーランドで古くから食べられている、いものこと。日本のさつまいもの祖先にあたるともいわれます。
パープルクマラ、オレンジクマラ、レッドクマラなどの種類があり、見た目はさつまいもです。甘くするために品種改良が重ねられた日本のさつまいもと比べ、味はあっさりしています。

そのクマラを、ややカレー風味に仕上げたのが今回ご紹介するクマラスープです。日本のさつまいもを使って作るので、甘さのバランスを取るために、じゃがいもを少し加えたレシピにしました。甘みの強い味がお好みの方は、全量さつまいもで作ってもOKです。

クマラスープは、ラムなどのお肉料理とよく合います。ステーキと一緒に召し上がれ。

  • さつまいも 1/4本(皮をむいて50g程度)
  • じゃがいも 20g
  • 玉ねぎ 15g
  • バター 10g
  • カレー粉 小さじ1/4
  • コンソメスープ 160ml
  • 牛乳 50ml
  • 塩 少々

スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。

1. さつまいも、じゃがいもはそれぞれ皮をむいて2cm角程度の角切りに、玉ねぎはみじん切りにする。
2. 鍋にバターを入れて中火で熱し、溶けたら1のいも類と玉ねぎを入れて炒める。玉ねぎが透き通ってきたら、カレー粉を加えてさらに炒める。
3. カレー粉が全体に回ったら、コンソメスープを入れてフタをし、いもに火が通るまで煮る。
4. いもが柔らかくなったら火を止め、全体が均一になめらかになるまでミキサーにかける。
5. ミキサーにかけたものを鍋に戻し、牛乳を加えて混ぜながら火にかける。ひと煮立ちしたら火を止め、塩で味を調える。スープジャーの湯を捨てて注ぎ入れたら完成。


※保温後は6時間以内に一度にお召し上がりください。

ライター:松下梨花子
スープの撮影:土肥裕司
編集:オフィス福永

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