食べ物を変えたら驚くほど背が伸びた。  栄養の勉強を始めたのは、竜一朗が侍ジャパンに選ばれたときです。親子で栄養講座を受けました。その後、ジャイアンツジュニア時代にかなり細かく指導していただいたんですが、それを実践したら本当にすごく大きくなったんですよ。親子で食事の重要性を痛感しました。「食べ物ってすごいんだな」って。それで、個人的に勉強をして『アスリートフードマイスター』という資格を取りました。

 勉強して一番変わったのは、お弁当を食べるタイミングも気にするようになったことかな。試合の日なのか練習の日なのか。試合の日だったら、第一試合だと試合が終わったあとにお弁当を食べるので、気にせず本人の好物を入れますが、第二試合だとお弁当を食べてから試合をする可能性が高いので、おにぎりみたいにパッとつまめる食べやすいものにしますし、消化を考えて揚げ物などは入れないようにしています。

弁当のほかに補食もクーラーボックスに入れて欠かさず持参。練習後、時間を空けずに栄養素を摂るようにしている

朝4時から弁当づくり。その生活にも慣れた。  竜一朗はクラブチームに所属しているので、練習は基本的に週末なんです。だからお弁当づくりも土日のみ。朝6時半には集合しないといけないので、わたしは4時に起きてお弁当をつくり始めます。確かに朝早いですが、そこまで大変でもないですよ。何年もこういう生活をしているので、もう慣れちゃいました。

 ただ、昔は朝が苦手なタイプだったので、起きるのが辛くて泣いてました(笑)。寝坊しちゃうこともあったし。すべてがわたしにかかっていると思うとプレッシャーも重くて……。そう考えると、わたしも成長してきたのかな。

 お弁当づくりだけじゃないんですが、生活全般にわたる野球のサポートは体力勝負だなと思います。わたしはもともと野球好きというわけではないので、初めての世界に戸惑って「しんどいな」と思っていた時代もあったんですよ。それでも、なぜ続けてこられたのかと言えば、それはもう子どものためだからです。自分のためだったらここまでできない。子どもが喜ぶ顔が見たいから、力が湧いてくるんですよね。

子どもたちの裏でお母さんも戦っている。アスリートの母にとって、台所はいわば戦場のようなものなのかもしれない

お弁当とは息子への母の愛。愛そのもの。  竜一朗は三人兄弟の真ん中で、赤ちゃんの頃から手がかからない子でした。何も言わなくても勉強していて、いつの間にかお風呂に入って、気づいたら寝ている。そんな感じで、マイペースにやるべきことをやるタイプ。それにひょうきんで我が家のお笑い担当なんです。

 本人はプロ野球選手を目指して頑張っているので、実現すればいいなと思うし、応援していきますが、人生それだけではないですからね。親としては、竜一朗らしく笑顔で生きていてくれたらそれだけで十分。あまり多くは望んでいません。

 親子の会話は……この年代の子にしては、まぁまぁ話してくれる方じゃないかな。キツい一言とかありますけど、これも長男のときに経験して免疫ができてますから(笑)。でも、お弁当がコミュニケーションツールになっているなとは思いますよね。空っぽになって戻ってきたら嬉しいですし、新作を入れた日は気に入ってくれるかなってドキドキして。「どうだった?」って聞いて「美味しかったよ」って言われると嬉しくて。本当、お弁当は愛ですね、愛そのものですよ。

※2016年9月 公開