佐藤和花さんは、ウエイトリフティング界の超新星。2021年12月の全国中学生選手権大会女子49キロ級では、中2ながら逆転優勝しました。父和夫さんは宮城農業高校ウエイトリフティング部の監督で元オリンピック選手。母明代さんは名門東北高校女子柔道部の監督を務める元柔道家。長兄康太郎さん、次兄駿太郎さんも大学ウエイトリフティング界のホープという家庭で育ったサラブレッドです。ウエイトリフティングを始めてからわずか1年半で日本一に輝いたスーパーガールの飛躍を、明代さんは深い愛情で見守っています。
周りの人たちに恵まれて、天真爛漫に育った
私が東北高校女子柔道部の顧問をしているため、教え子たちの国際大会応援や、長男の海外遠征の付き添いなどでいろんな国に家族で行きました。ブラジル、タイ、マレーシア、韓国……。アルバムには世界各国で撮った写真がいっぱい。写っている和花の顔は全部笑顔です。性格は天真爛漫の一言につきます。幼少期から両親の知り合いの大人に数多く接してきたからか、どこへ行っても物おじしないに明るい性格になりました。反抗期もなかったですし、失敗しても悩まないポジティブ思考。最近は和花の取材も増えて「どんな子育てをしてきたんですか?」と聞かれることが多いのですが、お恥ずかしいことに私は顧問の仕事で忙しく、ほとんどほったらかし。周りの方に恵まれて、体操、陸上、ウエイトリフティングと複数のスポーツをすることで心と体を鍛えてもらいました。現在は中学で陸上部、土日は特別に許可をもらって夫(和夫さん)が監督を務める宮城農業ウエイトリフティング部の練習に参加させてもらっていますが、そこでも年上の高校生たちに馴染んで、和気あいあいと楽しく練習しているようです。
「今」を明るく生きる和花の姿に何度も励まされてきた
生まれてすぐ、和花の耳に1万人に一人といわれている先天性の障害があると知った時は、ショックで夫婦で悩みました。「私のせいで……」と自分を責めたこともありました。小学生高学年のときには健康診断で側わん症と言われ、治療のために二人で日本中の治療院を回ったこともありました。治療がなかなかうまくいかず、私が暗い気持ちになりそうなとき、和花は医者から言われた背骨矯正の体操を満面の笑みで毎日コツコツ続けていました。他の人と少し形が違う耳のことも、髪の毛で隠すことなく、これまで前向きに生きています。スポーツで目標を決めてそこに向かって努力し、「今」を明るく生きる和花の姿には、私のほうが何度も励まされています。
いつかはウエイトリフティングをやって欲しいなと思っていたのですが、器械体操を経て、中学入学後ごく自然な形で自分からウエイトリフティングを始めると言いました。幼い頃から長男を尊敬していて、日本一をとってみたいと思っていたようです。五輪選手の三宅宏美さんや、八木かなえさんにも憧れているようですが、和花の目標は常に「兄」。背中を追うようにウエイトにのめり込んでいきました。
パワーUPしつつ階級に合わせ減量も。選手の食事は悩ましい
本格的にウエイトリフティングを始めてから和花の意識が激変しました。1日3回体重を測り、食事も栄養バランスを気にするようになりました。主人が家庭菜園で収穫したキャベツ、ブロッコリー、トマトなども食卓に頻繁に並びます。今はニラが収穫期なので、新鮮なうちにナムルにして夕飯の一品にしていますよ。たんぱく質が多くとれる鶏のササミは質にこだわって馴染みの精肉店で購入しています。お弁当は具だくさんの味噌汁と、野菜のおかずがメイン。太りすぎないよう、親子で工夫するようになりました。年ごろの女の子ですから、本当は美味しいスイーツを好きなだけ食べたいと思います。でも大会前はグッと我慢していますよ。
最近は「太ももが太くてジーンズが似合わない」と言いながら、街の古着屋さんで買ったハイウエストのワイドパンツでオシャレを楽しむようになりました。私に似て「女子力」が少ないところが心配ですが(笑)、そのままの明るさで、周りの人を元気づけられる女性になって欲しいですね。ウエイトリフティングは高校から始める選手が多いので、これからが頑張りどき。ライバルが増えても自分らしさを失わず、成長し続けてほしいと願っています。
※2022年7月 公開