災害には普段の延長で備える。アウトドア料理家に聞く防災のコツ【レシピ付】

9月1日は防災の日。1923年の関東大震災の発生日に由来しています。「キャンプなどのアウトドアは、災害時の生活を疑似体験することにもつながります」と話すのは、アウトドア料理家のshihoさん。今回は小学生のお子さん2人と一緒に、防災に生かせるポイントや備蓄品のレパートリー、災害時でも作れるレシピを教えていただきました。

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shihoさん

shihoさん

管理栄養士。アウトドア料理研究家。
病院に勤務し、厨房業務や献立・栄養指導・特定保健指導などを経験したのち結婚を機に退職。現在は1男1女の子育てをする傍ら、同じく管理栄養士の資格を持つ登山ガイドの夫・ヤッホー!!さんと共に、食べておいしくカラダにうれしい山ごはんやアウトドア料理をイベント・雑誌・書籍で発信している。
Instagram:@shiho_yahho

私たちはよく家族でキャンプをしたり、山へ遊びに行ったりとアウトドアを楽しんでいます。特に山では電気やガス、水道などライフラインが整わない中で寝起きしたり食事したりするので、そういった面では災害時の状況と似ていますね。特に気を付けているのは安全面と衛生面です。体調が悪くなってもすぐに医療機関にかかれるとは限りません。自分の身は自分で守れるようにと意識しています。

▲shihoさん宅のアウトドア兼防災グッズの一部。サーモスの保冷ショッピングバッグは停電時に冷蔵品を入れることも。

我が家では「防災グッズ」として特別に揃えているものはそれほど多くありません。収納スペースには限りがあるので、家でもアウトドアでも災害用としても使えるものを基準に選んでいます。普段から使い慣れておけば、いざという時にも慌てず対応できますから。

例えば洗い物を減らせるよう、耐熱ポリ袋やビニール手袋、アルミホイルなどは必ず常備。携帯トイレは車に常備しておき、いつでも使えるようにしています。懐中電灯は防災グッズとして欠かせませんが、使用時は片手がふさがってしまいますよね。山の夜は本当に闇の中。そこで調理中などでも両手が使えるようにヘッドライトも用意しています。非常時には停電で街灯も消えているはず。実際の暗さを想定して用意しておくのも大事なのではないでしょうか。

もし機会があれば野外でカセットコンロを使って料理し、災害時の疑似体験をしてみると良いかもしれません。例えば「お米を炊く」という、おうちの中では簡単な作業も、外では気温や風の強さなどでできあがりがガラッと変わるんです。「リアルを知っておく」ことは、非常時に向けての大切な経験になると思っています。

備蓄品も「防災用」と分けて考えず、食べ慣れた食材を購入するようにしています。賞味期限はあまり長いと買い替え時期を忘れてしまうので、半年~1年程度を目安にしていますね。選ぶ基準として大切にしているのは以下の4つ。いずれもアウトドアと防災、どちらにも共通します。

【1】未開封なら常温保存できるもの
【2】家族全員のアレルギーや好き嫌いに配慮する
【3】1つの調理法ではなく複数に展開できる食材を選ぶ
【4】栄養面だけでなく味のバリエーションも意識する


飲み物や粉類、調味料など、未開封なら常温で保存できるものは多めにストック。また私と上の娘にアレルギーがあり、下の息子は好き嫌いがあるので、普段通りにパッケージの裏面も必ずチェックします。粉類や缶詰などは色々な料理に使えるので意識して購入。レトルト食品などは飽きないように味のバリエーションも考慮するようにしています。

「野菜や果物などの生鮮食品が手に入らなかった」と、被災者の声を取材した記事を読んでからは、根菜類など日持ちする野菜を多めに買っておくようになりました。災害時は特にビタミンやミネラル類が不足しがちなので、手軽に摂れる野菜ジュースも欠かさず購入するようにしています。

また、避難時は非日常が続くのでストレスがかかります。甘いもの、温かいものがあると気持ちも安らぎますよね。今回は私がアウトドアでもよく作るデザートレシピをご紹介します!

未開封なら常温保存可能な食品や調味料を使って作る、簡単でおいしい蒸しパンです。カセットコンロで作れるので、電気・ガス・水道などのライフラインが止まってしまった災害時のために覚えておくと役に立ちますよ!

▲すべて未開封で常温保存できる材料を使用。shihoさん愛用のカセットコンロと耐熱ポリ袋で作ります。
  • ホットケーキミックス 100g
  • 無調整豆乳 100ml
  • 白桃(缶詰) 50g
  • マヨネーズ 大さじ1

・生地を入れるポリ袋として、耐熱温度90~110℃の高密度ポリエチレン素材のものを用意する。
・白桃(缶詰)はひと口大に切る。

【1】ポリ袋にホットケーキミックス・無調整豆乳・マヨネーズを入れ、全体が馴染むまで、袋の外側からよく混ぜる。

【2】白桃を均等になるようにのせ、ポリ袋の空気を抜き、口をしっかりと縛っておく。

ポリ袋の空気を抜く時は、口の部分をねじり上げてから上の方で縛っておきましょう。ねじることで半真空状態になり、加熱する際に生地がパンパンに膨張するのを防げます。さらに上の方で縛ることで、膨張しても破裂する危険性が低くなります。

【3】鍋に耐熱皿を置いたら皿よりも少し下まで水を注ぎ、中火にかける。沸騰したら【2】を置き、フタをして弱めの中火にしたら7分加熱し、ひっくり返して再度7分加熱する。

▲鍋底にポリ袋が直接触れると溶けたり破れたりしてしまうため、耐熱皿を敷いて調理します。
▲ひっくり返す時はフライ返しなどを使うと便利です。

【4】袋を開けて粗熱を取り、食べやすい大きさに切る。

▲口を閉じたままだと湯気でベタッとしてしまうので、10分ほどポリ袋を開けて冷ましておきましょう。

【ポイント】
今回は白桃を使いましたが、みかんやフルーツミックス缶もいいですね。豆乳の代わりに野菜ジュースでもおいしく作れます。その際はほのかな甘さがプラスされるよう、果汁入りがおすすめです。マヨネーズはなくても作れますが、入れることでしっとりふわふわな食感に。味や香りは残りませんし、ポリ袋に生地がくっついてしまうのも防げます。他にも生地にココアや抹茶を入れるなど、自由度の高いレシピです。

地震や台風による災害時だけでなく、大雨や大雪などで買い物に出られない時も、普段から備えていれば慌てずに済みそうですね。「防災グッズを揃えなきゃ!」と気負わず、日常の延長という気持ちで取り組んでみてはいかがでしょうか。

撮影:山下コウ太
編集:Nadia
執筆:田窪 綾
調理師免許を持つフリーライター。惣菜店やレストランで8年ほど勤務経験あり。食分野を中心に、Webや雑誌で取材やインタビュー記事作成などを行っている。

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