サーモスブランドの歴史

1904年にドイツで誕生したサーモスブランド。
100年以上続くその歴史の始まりを紐解いていきます。

「魔法びん」のパイオニアであるサーモス。1904年に世界で初めてガラス製魔法びんを製品化し、1978年には日本の技術力をもって「高真空ステンレス製魔法びん」を生み出した世界最大の魔法びんブランドです。

ブランド誕生から100年以上。サーモスは、断熱技術を応用しながら時代のニーズを反映したさまざまな製品を届け、人々の暮らしに便利さや快適さを届けてきました。

電気やガスなどのエネルギーを使用せず保温・保冷を実現する断熱技術や、使い捨てにすることなく繰り返し使えるアイテムは、世界中が力を合わせて取り組んでいるサステナビリティの精神にも繋がっています。

魔法びんとサーモスブランドの始まり

1880年代

ドイツの物理学者A・F・ヴァインホルトが「真空容器」の原理を発明。

1892

イギリスの科学者ジェームス・デュワーが真空の二重ガラス容器を製作し、真空となっている空間の内壁に金属メッキを施すことで、輻射による熱の損失を防ぐ魔法びんの原型を作りました。現在でも、液体窒素などを保存するための理化学用の魔法びんは「デュワーびん」と呼ばれています。

ケータイマグ

1903

デュワーの元でガラス容器を製造していたドイツのガラス職人ラインホルト・ブルガーが、二重ガラス容器を保護用の金属ケースで被うアイデアを考案。世界初の「ガラス製の魔法びん」として、パテント(特許)をドイツで取得しました。

1904

ドイツのベルリンにて、ブルガーが「THERMOS G.m.b.H.(テルモス有限会社)」を設立し、サーモスブランドが誕生。商品としてのガラス製魔法びんの生産を開始します。ブランド名の「THERMOS(=テルモス)」はギリシャ語で「熱」の意味を持ち、英語では「サーモス」と読みます。

1907

イギリス、アメリカ、カナダにサーモス各社が設立。世界で魔法びんが愛用される始まりとなりました。
また、日本でもこの年に初めてドイツ サーモス社製の魔法びんが輸入されました。

それぞれの時代を反映する、サーモスの広告

サーモス社製の魔法びんが日本にやってきたのは、明治時代のことでした。1908年(明治41年)の新聞広告では、「驚くべき発明なる寒暖壜(=びん)」と表記して、ドイツ サーモス社製の魔法びんを紹介しています。

1908年(明治41年)ドイツサーモス社製品を紹介した広告

世界各国でも、当時はまだ魔法びんが目新しく貴重で、その広告にはサーモスを愛用する有名人が多く登場していました。

例えば1909年、米国で展開された全米を巡回する宣伝車「サーモスカー」によるクリスマスキャンペーン広告は、当時の政治家や冒険家など、サーモス製品の愛用者をコラージュで紹介しています。サーモス製品は日本でもお馴染みの第26代アメリカ合衆国大統領のセオドア・ルーズベルトをはじめとし、第27代大統領のウイリアム・タフトもホワイトハウスで愛用していたと記録されています。

魔法びんはその高い保温性能から、北極点到達を競ったロバート・ピアリーとフレデリック・クック、壮絶な南極探検から生還したアーネスト・シャクルトンなど、偉大な探検家たちにも愛用されました。

20世紀初頭は多くの人々にとって大空への憧れも強く、飛行機開発者のライト兄弟や飛行船で有名なツェペリン伯爵も広告に登場していました。

1909年に実施した全米を巡回する宣伝車「サーモスカー」によるクリスマスキャンペーン広告

著名人が登場するもの以外では、家族がサーモス製品を使用するシーンを描いたものや、夏と冬のシーンを対比させて、温かいものも冷たいものも、どちらも楽しめる魔法びんの性能をアピールした広告が残っています。

広告のイラストでは海や山、ゴルフ場でのレジャーシーンが印象的に描かれ、当時のアメリカの豊かな暮らしぶりがうかがえます。1910年代は、ボトルや携帯用のケースなど製品ラインアップも急速に増え、ライフスタイルが豊かになって多様化し、同時にサーモスも大きく発展した時代でした。

1914年に第一次世界大戦が、さらに1939年には第二次世界大戦が勃発。世界中が大きく混乱・変化する時代の中でも、温かいスープや料理を保存するフードジャーをイギリス軍などが採用するなど、魔法びんは人々の生活と非常に密接な存在になっていきました。

  • 1914年にはじまった第一次世界大戦は世界中に大きな影響を与えていきました
  • 1918年の広告には、今までと違って戦争の色が強くあらわれています

イギリス王室にも認められたサーモス

1930年になると、サーモスは英国王室から「英国王室御用達」であることを示す紋章を自社製品につける権利を取得。世界中で認知され、信頼されるブランドとして大きく成長していきました。1930年のイギリスの広告には、しっかりと紋章が記されています。

1950年代には、有名なイラストレーターによるシリーズ広告を展開。

砂漠のテントで休憩する冒険家、自宅で夜のコーヒーを楽しんでいる英国紳士、極寒の地に向かう探検家が描かれたイラストで、サーモス製品の実力をアピールしました。1930年代の広告と同様、英国王室のマークが右上に記されています。