「白湯」はなぜ人気? 飲むだけ健康法の始め方
からだを優しく温め、「冷え」からくるさまざまな不調を取り除いてくれる「白湯」。飲むとなんだかほっとこころが休まるのは、白湯の熱がからだと腸を整えてくれるからでした。正しい白湯の作り方や、飲みやすくなる簡単アレンジを内科医・関由佳先生に聞きました。
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水を温めるだけという手軽さと、飲みやすくクセのない味わいが魅力の「白湯」。健康・美容に関心を持つ女性を中心に数年前からブームになった白湯は、今や多くの人々にとって、身近な飲みものとなりつつあるのではないでしょうか。
白湯がからだによいとされる理由や、なぜ気持ちがほっと安らぐのかを、内科医で予防医学やアーユルヴェーダの知識にも精通する関由佳先生に聞いてみました。
関 由佳
せき・ゆか
内科医。専門は栄養療法、予防医学。味噌ソムリエ、野菜ソムリエ、メディカルフード研究家としても活躍。『毎日食べたい!腸活みそレシピ』(海竜社)など著書多数。
シンプルなのに想像を超えるパワーが話題となり、今や“最強の飲みもの”と謳われる「白湯」。ただのお湯かと思いきや、はるか5000年前の古代インドで発祥した世界最古の伝統医学“アーユルヴェーダ”も、白湯を「火・風・水の3要素を含むバランスの取れた飲みもの」と位置付けているのです。
「アーユルヴェーダでは、人間はみな<ドーシャ>と呼ばれる生命エネルギーを持っています。ドーシャは、〈ピッタ(火)〉〈ヴァータ(風)〉〈カパ(水)〉の3要素でできており、これら3要素のバランスが取れている状態こそが理想ですが、人によってピッタが強い、ヴァータが強いなど持って生まれた体質はさまざま。その点、3要素をすべて併せ持つ白湯はどんな体質の人にもぴったり合い、足りない要素を補ってくれる飲みものだといわれているのです」(以下、関先生)
もともと水である白湯は〈カパ(水)〉の質をもち、それを熱することで〈ピッタ(火)〉の質が、さらに沸騰したときにポコポコと湯の中に気泡が生まれて〈ヴァータ(風)〉の質が加わることから「水・火・風が調和した飲みもの」とされているのだとか。
「西洋医学的にみても、白湯は理にかなった飲みものです。白湯を飲むことによって胃腸がポカポカと温まり、からだの消化力、代謝力、免疫力などが高まるのです。近年ブームになっている“冷えとり”では靴下の重ねばきなども人気ですが、より効果的なのはからだの内側から温めること。つまり白湯を飲むことなのです」
生活習慣や過度なストレスで、からだが冷えがちな現代人。関先生によれば、からだが冷えると、全身の不調につながる負のサイクルに陥ってしまうのだとか。
「からだが冷えることによって全身の血流が悪くなり、胃腸の消化液の分泌が少なくなって栄養を上手に吸収できなくなります。さらに、腸の動きが鈍くなって不要物を排泄しにくくなり、自律神経やホルモンのバランスが乱れ、血流がますます悪くなっていく。すると、病気にかかりやすくなります」
まさに冷えは万病のもと。逆に、健康によいとされる36.8度くらいの体温を保てるとからだにとってはいいことづくめ。ここで、からだを温めるのに効果的な白湯を飲み続けたときに期待できる健康&美容の効果をまとめてみましょう。
さらに、白湯の力はからだへの作用だけにとどまりません。なんと「こころの“冷え”もとってくれる」と関先生。
「からだが冷えてしまったとき、気力や活力まで失われたことはないでしょうか? アーユルヴェーダでは、こころにもピッタ(火)があるとしていて、これが消えると不安を感じやすくなります。その点、白湯で胃腸を温めると、緊張がほぐれ、ほっとからだがゆるみます。その結果、こころに活力が戻り、イライラしにくくなり、ストレスに負けないメンタルに変わっていくのです」
リラックスといえば、インターネット上には「白湯が“ハッピーホルモン”セロトニンを増やす」との説もありますが、残念ながらこれは誤り。「白湯を飲むからセロトニンが出るわけではありません。ただ、セロトニンは腸内で作られることから、白湯によって腸内環境が整えば、セロトニンが働きやすい環境になるといえますね」
消えてしまったこころの火を再びポッと燃やし、リラックスして幸せを感じやすいからだになれる。白湯にはそんな効果もあるようです。
関先生によれば、アーユルヴェーダ式にのっとった正しい白湯の作り方は次の通り。
1. 鍋・やかんにきれいな水を注ぎ、フタはせず火にかける
2. コンロの火にかけて、沸騰させる
3. 10〜15分ほどポコポコと気泡が出る程度に沸騰させつづける
「使うお水はミネラル水や浄水が望ましいですが、飲み慣れたものでよいです。カフェインが含まれるコーヒーや紅茶と違い、白湯はからだを刺激することなく、やさしく温められる点が魅力です。また、アーユルヴェーダ式では、沸騰させるのがポイント。コンロの火で沸騰させるのが理想ですが、電子レンジで温めたものやウォーターサーバーのお湯でも飲まないよりはずっといいので、ぜひできる範囲でスタートしてみてください」
飲むときのベストな温度は50度くらい。フーフーとさましながら少しずつ、ゆっくりと飲むといいそう。また、1日に飲む白湯はマグカップ3〜5杯(1リットル未満)が目安とのこと。
「白湯は、飲むタイミングによってからだへの作用が変わります。オススメは“目覚めてすぐ”。寝起きのからだは一日のうちで最も冷えているので、白湯を飲むことによって消化管を刺激し、活動のスイッチをオンにできます。“食前”に飲めば胃腸が消化の準備を始めるきっかけに。“食中”に少量飲めば消化の働きを助けます。“就寝前”ならほっとくつろげるリラックス効果が得られますよ」
ただし、注意したいのが“食後”の30分間。このタイミングは、胃の消化液を薄めてしまうので白湯を飲むのは避けるのがベター。
また、一度沸騰させた白湯の温め直しはNGで、そのつど沸かすのが理想。むずかしい場合は、朝に多めに沸かしておいて、マグボトルや保温ポットなどに入れておくとよさそうです。
シンプルさが魅力の白湯ですが、人によっては飲みにくさを感じたり、飽きてしまったりすることも。そんなときは、フレーバーを”ちょい足し”するのも選択肢の一つです。
▼白湯+レモン
美肌に欠かせないビタミンC、疲労回復を促すクエン酸が豊富に含まれたレモン果汁をプラス。ただし、胃腸への刺激が強いのでお腹が弱い人は量を加減して。
▼白湯+ショウガ
生のショウガ1片をすりおろして入れるだけ。ショウガに含まれる辛味成分ショウガオールの働きで内臓はもちろん、からだのすみずみまでポカポカ倍増。
▼白湯+シナモン
漢方では桂皮(けいひ)と呼ばれ、からだを温める効能はもちろん、抗菌作用や利尿作用にも優れるシナモン。甘くスパイシーな香りは気分転換にもぴったり。
▼白湯+はちみつ
天然のスーパーフード・はちみつは、ビタミンやミネラル、酵素といった栄養の宝庫。豊富に含まれるブドウ糖は脳のエネルギー補給にも最適。
きれいな水で作ったシンプルな白湯は、ゆっくりと飲んでいると、喉を通り、胃に落ちてゆくのがわかります。それは「何がしたい? 何が食べたい? 何が欲しい?」と、自分の願いに思いを巡らせる貴重なひとときになることも。純粋でシンプルな飲みものだからこそ、からだが発する声なき声に集中できる、それも白湯の一つの魅力かもしれません。
パッと作ってマイボトルに入れておけば、お家でもオフィスでもスキマ時間にホッと一息つけそうです。おまけに、飲むだけで美と健康のケアにもなるなんておいしい話。こころとからだに温かい火を灯してくれる白湯ライフ、さっそく今日からはじめてみては。
編集:ノオト
イラスト:糸井みさ
矢口 あやは
やぐち・あやは
ライター・編集・イラストレーター。大阪府生まれ。トラベル、アウトドア、サイエンスなどのジャンルで、雑誌やWEB、広告などを中心に活動。ヨットが好きで2020年に一級船舶免許を取得。
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