山田英季さん×山口祐加さん対談 「玉子焼きって、庶民派なのに偉大!」

朝食やお弁当おかずの定番「玉子焼き」。シンプルで身近な存在だからこそ、実は奥が深いよう。人気レシピサイト『and recipe(アンド レシピ)』を運営する料理家・山田英季さんと、素朴な家庭料理の魅力を発信する自炊料理家・山口祐加さんに、玉子焼きのあれこれを語ってもらいました!

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山田英季(やまだ・ひですえ)

山田英季

やまだ・ひですえ

料理家。1982年兵庫県生まれ。フレンチ、イタリアンレストランでシェフを歴任後、神田のもつ焼き屋「でん」をオープン。2015年11月に「and recipe」を立ち上げ、「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマにしたWEBサイトの運営を行う。『冷蔵庫にあるもんで』(幻冬舎)が好評発売中。
Twitter:https://twitter.com/EdhiAdam

山口祐加(やまぐち・ゆか)

山口祐加

やまぐち・ゆか

自炊料理家・食のライター。1992年東京都生まれ。出版社とPR会社を経て、2018年4月よりフリーランスとして活動。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。著書に『週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい。』(実業之日本社)、『ちょっとのコツでけっこう幸せになる自炊生活』(エクスナレッジ)がある。
Twitter:https://twitter.com/yucca88

▲身近すぎる存在と侮るなかれ。奥深すぎる玉子焼きの世界へ、いざ!

甘い、しょっぱい、はたまた具材入りなど、さまざまな味のバリエーションを楽しめる玉子焼き。山口さんと山田さんは、どんなシーンで玉子焼きを作ることが多いのでしょうか?

「おかずのプラス1品で作ることが多いですね。友人が遊びに来たときに、テーブルにカセットコンロを出して目の前で作ったりもします。ジュワ〜っと焼ける音だったり、玉子焼きをひっくり返す様子だったり、すぐ作れるのにライブ感満載なので喜んでもらえるんですよ。」

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

僕は玉子焼きが大好きすぎて、週2〜3回は作ってます。お腹が空いて頭が回らない。だけど、ごはんが炊きあがる時間なんて待てないし、パスタを茹でたりソースを作ったりするはちょっとめんどう。そんなときは、もっぱら玉子焼きですね。手間も時間もかけずにさっと作れて食べられるから、もはやカロリーメイト的存在です(笑)

玉子焼き=カロリーメイトはおもしろい発想ですね(笑)。それなら私にとっては、スイーツみたいなかわいい存在です。プリンのように愛らしいし、こんなにかわいい見た目の食べもの、ほかにないじゃないですか。

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

え、そう…!?

▲「え?かわいいですよね?変ですか?(笑)」と周囲に確認する山口さん

私はシンプルな出汁巻き玉子が大好きです! お味噌汁作りでちょっと余った出汁を使ったり、めんつゆで代用したりしてもおいしくって。山田さんはどんな玉子焼きを作っているんですか?

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

同じく自分で作って食べるときは、シンプルな出汁巻きがほとんど。友人に出す場合は、中に具材を入れるかな。きのこだったり、ほうれん草のバターソテーだったり。あと海苔の佃煮や桜エビを入れてもおいしいですね。

玉子焼きって、どんな食材にもよく合うんですよね。卵自体の味に主張がないので、チャーハン的な汎用性があるというか。私のおすすめ具材は、トウモロコシです。玉子がトウモロコシの甘みをまとって、とてもおいしいんですよ。缶詰なら、汁ごと使ってもいいですし。

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

それは絶対おいしいやつだ……。あのトウモロコシの汁は、うまみ出汁ですもんね。僕の至高の玉子焼きは、すき焼き肉を使った1品。玉子焼きをすき焼き肉で包んでパン粉をつけて揚げるんですけど、これはハンパなくおいしかった!

▲「あれは最高でしたねぇ……」と、至高の玉子焼きの味をしみじみ思い出す山田さん

悪い人が考えた玉子焼きですね(笑)。だけどおいしそう!

山口さん
山口さん

さて、ここからはプロのおふたりによる玉子焼きを上手に作るテクニックのお話を。卵液を層にして焼いていく玉子焼きは、料理初級者にとってはやや難しいイメージ。お店のような美しい玉子焼きを作るにはどうしたらいいでしょうか?

山田さん
山田さん

実はですね、玉子焼きはこうしたらうまく焼けます! って、お伝えするのが難しい料理なんですよ。

わかります! キレイな玉子焼きを作るのに大切なのは、フライパンを振って玉子を返すテクニック。あれは感覚の習得が必要で、ほとんどスポーツみたいなものなんですよね。

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

何度も練習すれば、スポーツと一緒である日突然上手にできるようになるんですよね。

私は、料理教室を含めて過去80本以上は巻きました!

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

それはすごい! 僕は居酒屋やレストランで働いていたので、気づいたら習得できていたかな。しいて習得のコツを挙げるとしたら、最初のひと巻き目をしっかり巻くことですね。

始めに芯をしっかり作ってあげると、その後の玉子を重ねて巻きやすくなりますよね。あと、ふわふわに焼き上げることが最重要なので、卵は3個以上、贅沢に使うことがオススメです!

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

玉子焼きの厚みも大事なポイントだよね。やっぱりポテッとしたフォルムの方が、おいしそうに見えるから。

玉子焼きって意外と奥が深いですよね。適当に作るとなんか違う……。だからなのか、実際に上手に作れるようになると達成感もあって、作っているときもどこかうれしい気持ちになるんですよね。

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

そうそう。練習すれば必ず上達できるし、コツさえつかめば得意料理にもなるよね。誰かに作ってあげたら喜ばれるし、自分のために作ってもお腹も心も満たせる。ハードルは高いように見えて、意外と低いんじゃないかな。

上手に巻くのは、練習あるのみ! とのことですが、玉子焼きを焼く道具についてもぜひアドバイスをいただきたいところ。玉子焼き専用の調理器を持っていない場合、丸型のフライパンで玉子焼きを作ることもありますが、山田さんと山口さんによると、玉子焼き専用の調理器を持っておくことが上手に焼ける近道になるそう。

山田さん
山田さん

丸いフライパンだとどうしても端切れができちゃうので、上手に焼きたいなら玉子焼き専用の調理器を使うといいと思いますよ。僕は気づいたら素材やサイズ違いで、全部で4つも持ってました。

▲山田さんの玉子焼きフライパンコレクション

本当に玉子焼きが好きなんですね(笑)。でも玉子焼き専用の調理器は、1つは持っておいて損はないと私も思います! 玉子焼きだけじゃなくて、ちょっと野菜を茹でたり、さっとお肉を炒めたりもできるので、実は使い勝手もいいんですよ。

山口さん
山口さん

鉄やアルミのほか、表面がコーティングされたものなど、さまざまなタイプがある玉子焼き専用の調理器。初心者なら、表面加工のある滑りのいい1台を選ぶのがおすすめだとか。

山田さん
山田さん

鉄やアルミだと玉子がくっつきやすく、お手入れもやや大変なので、最初の1台は表面がコーティングされている調理器を選ぶといいと思います。サーモスさんの玉子焼きフライパンは、今回初めて使わせていただいたのですが、表面の滑りがいいので、初心者の方でも玉子焼きが巻きやすいと思いますよ。

▲13cm×18.5cm IH・ガス火対応(手前)。15cm×18.5cm 幅広・深型設計でガス火専用(奥)のサーモス玉子焼きフライパン

追加の油がいらないくらいの滑りのよさですよね。あとは深くて幅広のタイプなので、炒めものや茹でものだけでなく、汁物を作るときにも使えますよね。

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

留め具がフライパンの内側にないのもいいですね。こびりつく心配がないから、お手入れも楽々。玉子焼き作りのハードルをより下げてくれそうです。

お弁当作りやお家ごはんにぴったりですよね。これから自炊を始めたいという人にもぜひチェックして欲しいです!

山口さん
山口さん

玉子焼きの好みや作り方のちょっとしたコツを教えてもらったところで、サーモスの玉子焼きフライパンを使って、玉子焼きを作っていただきました。

山口さんの出汁巻き玉子

  • 卵 3個
  • だし(めんつゆでも可) 50ml
  • 醤油 小さじ1
  • みりん 小さじ1
  • 米油 小さじ1

1. ボウルに卵を割って混ぜた後、冷たいだし、みりん、醤油を加えて混ぜ合わせる。山口さんいわく「この時点で味見して調整しておけば、味の失敗はありません」とのこと。

2. 玉子焼きフライパンを中火にかけて油をなじませたら、卵液の1/4量を入れて全体に広げる。卵がふくらんできたら菜箸で気泡をつぶしながら火を通し、半熟状になったら箸でくるくると手前に巻いて奥に押しやる。

3. 卵液 1/4〜1/5量を入れ、卵焼きの下にも流し入れるようにして巻いて焼く。これを繰り返す。

4. 巻き終わったら食べやすいサイズに切り分ける。

▲ふわふわ&ジューシーな出汁巻き玉子の出来上がり

山田さんのしらすとネギの玉子焼き

  • しらす 20g
  • しょうが(みじん切り) 5g
  • 青ネギ(斜め切り) 1本
  • ごま油 大さじ1/2

<A>

  • 卵 3個
  • 煮切りみりん(600wの電子レンジで40〜50秒) 大さじ2
  • オイスターソース 大さじ1/2
  • 塩 少々
  • ごま油 小さじ1/2

1. ボウルに<A>を入れて、よく混ぜる。

2. 玉子焼きフライパンにごま油を入れて温めたら、しらす、青ネギ、しょうがを入れて、菜箸で混ぜながら香りが出るまで炒める。

3. 2に卵液1/3量を入れて、菜箸で混ぜながら半熟状にして奥から手前に巻く。

4. 玉子焼きフライパンの奥の角を使いながら形を整えていく。

5. 玉子焼きフライパンにごま油をほんの少し足して、残りの卵液の半分を入れて奥から手前に巻く。これをもう一度繰り返したら完成。

6. 食べやすいサイズに切り分ける。

▲オイスターソースとごま油が香り、食欲を刺激!

出来立てのあったかい玉子焼きが完成したところで、早速実食していただきましょう。さて、気になるその味わいは……!?

▲玉子焼きのエール交換がスタート!
山田さん
山田さん

ちょっと待って、まずは見た目が最高じゃないですか……。箸でつまんだ感じも枕にして眠ってしまいたいくらいのふっかふか具合です。

「やっぱりわかります? これがいわゆる、玉子焼きのかわいさです(笑)! 冷めないうちに、ぜひどうぞ。」

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

「では、いただきます!」

▲食べる前から笑顔がこぼれ落ちてしまう山田さん
山田さん
山田さん

う〜ん、おいしい! 玉子がほぐれると同時にジュワっと出汁が染み出てきて、もうなんていうか……ずっと口の中に入れておきたいくらいのおいしさです。出汁を食べているなぁって感じがする!

うれしいなぁ。山田さんに食べてもらうの、実は緊張していたので(笑)。それでは私もいただきますね!

山口さん
山口さん
▲「お弁当に入れるなら、こっちですね!」と、山田さんの玉子焼きを頬張る山口さん

あぁ、これはごはんが進む味です! 塩味のあるしらすは玉子との相性抜群だし、ネギのシャキシャキとした食感も楽しい。満足感たっぷりで、とってもおいしいです!

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

よかった! それにしても本当においしい。山口さんの出汁巻き玉子、余裕で1本いけちゃいそうです(笑)。出汁の上品さが、食べるごとに心を癒してくれます

癒されたい日はシンプルな出汁巻き玉子、満たされたい日は具入りの玉子焼きと、気持ちやシーンによって変えるのもいいですね。

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

アサリの缶詰や余った味噌汁を使ってもいいかも。どんどんレシピのアイデアがひらめいちゃうし、玉子焼きって本当に偉大だ……!

本当ですね! 玉子焼きについてこんなに深く語れるなんて、とても幸せな1日でした。今日はありがとうございました!

山口さん
山口さん
山田さん
山田さん

こちらこそ。どうもありがとうございました。ごちそうさまでした!

▲玉子焼きの話をすると、つい笑顔になる2人

山田さんと山口さんによる、めくるめく玉子焼き談義。

おふたりに教わった作り方のポイントさえ押さえてしまえば、おかずのもう1品にもおもてなしの料理にもなるから、日常の強い味方になってくれるはず。庶民派でありながら、実は偉大な存在の玉子焼き作りを始めてみませんか。

撮影:小野奈那子
編集:ノオト

船橋麻貴

船橋 麻貴

ふなばし・まき

雑誌やWEB、広告などで執筆中。生涯の目標に締切厳守を掲げるものの、いろいろ遅れがちな人生。特技は暴飲暴食と思いつき旅。焼き菓子&パン1年生。

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