スープジャーで世界一周 ―ロシアのおふくろの味・ボルシチ―
思うように出かけられないこの頃。日常を飛び出して旅に出たい! なんて気持ちになることもありますが、残念ながらのびのび旅行に行ける日はもう少し先になりそうです。 それならせめて気持ちだけでも、広い世界を味わいたいもの。 ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識、日本で手に入る食材で作れるレシピと共にご紹介します。 スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、世界一周してみませんか?
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冬の足音が近づく季節、寒い外気にさらされた身体には湯気が立ちのぼる温かいスープが何よりのご馳走です。
今回はとびきり寒い国、ロシアに思いを馳せて、代表的なスープ料理であるボルシチを取り上げます。
モスクワの平均気温は10月の時点で東京の12月並みで、真冬の最低気温は-10℃、内陸部では-50℃近くになることもあります。-50℃と言えば、まつげも凍るレベルの寒さ。毛皮の帽子やコートが必要なのも納得です。
日本のおよそ45倍という広大な国土を持ちながら、厳しい気候から、農業に向く土地はさほど広くないロシア。そのため食材を大切にする意識が強く、煮込み料理が多いのも特徴。その代表格が煮込みスープであるボルシチです。
ロシアに行ったことはなくても、ボルシチを食べたことがあるという方は多いのではないでしょうか。
ウクライナ生まれのこのスープは、今ではロシアの広い範囲で食べられる定番の家庭料理。家庭によって作り方や材料が少しずつ違う、言わばおふくろの味です。
味付けは基本的に塩・こしょうのみ。素材のうまみがスープに溶け出して、あつあつのうちに口に運べば身体がポカポカ温まり、心もほっこり。スプーンでひとすくいするごとに幸せな気持ちになるはず。
発祥の地ウクライナのボルシチは、塊肉やいんげん豆など、たっぷりの具材で作るご馳走として親しまれています。一方、モスクワなどの都市部では、ソーセージや酢漬け野菜を使ってささっと作るバージョンが好まれるそう。
このほか、シベリア風、ウクライナ風、キエフ風などがあり、地方色豊かなのは日本のお雑煮のようですね。ちなみに、ロシアはソーセージなどの加工肉や野菜の漬物がとても豊富。短い夏の間にたっぷりと肉や野菜を仕込んで保存食を作り、長い冬を乗りきるのが暮らしの知恵です。
家庭料理だけに、具材にこれと言った決まりはありませんが、真っ赤な野菜ビーツは欠かせません。
ビーツは「食べる輸血」と呼ばれるほどのパワーフード。こう見えて実はほうれん草の仲間で、あの赤はほうれん草の根元の赤色と同じ色素「ベタシアニン」の色です。
強い抗酸化作用を持つと言われるベタシアニンは、寒さでストレスのかかった身体を労ってくれます。
日本で生のビーツを目にする機会はあまりありませんが、水煮の缶詰が売っているのでご安心を。缶を開けると鮮やかな色に驚くはずです。強烈な見た目とは裏腹に、煮込むと柔らかな歯ざわりとほのかな甘味を感じます。
- ・牛肉 切り落とし 50g
- ・にんじん 20g
- ・じゃがいも 20g
- ・玉ねぎ 20g
- ・キャベツ 30g
- ・おろしにんにく 少々
- ・ベーコン 50g
- ・ビーツ(缶) 50g
- 【A】
- ・ビーツ缶汁 50ml
- ・カットトマト水煮 50g
- ・水 1/2カップ強
- ・ローリエ 1枚(なくてもOK)
- ・オリーブ油 小さじ1
- ・バター 少々
- ・塩こしょう 少々
- ・サワークリーム お好みの量
- ・ディル 適宜
スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。
1. にんじん・じゃがいも・ビーツは5~7mm角程度の棒状、玉ねぎは同じくらいの幅のくし形に切り、キャベツは短冊切りにする。ベーコンは細切りにする。
2. 鍋にオリーブオイルとバターを敷き、1の野菜類とベーコンを炒める。
3. 油が回ったらAと牛肉を加え、煮立ったらフタをして弱火で15~20分ほど煮る。
4. にんにくと塩こしょうで味を整えてスープジャーに入れる。食べる直前にサワークリームとディルをのせて完成。
※保温時は6時間以内に一度にお召し上がりください。
ライター:松下梨花子
編集:オフィス福永
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