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食卓をもっと楽しむ! プロに聞くノンアルコールドリンクの魅力 & おすすめカクテル3種

需要が高まりつつあるノンアルコールドリンク。日本初となるノンアルコール専門企業「株式会社アルト・アルコ」の創業者である安藤裕さんに、近年のノンアル事情や楽しみ方、自宅で作れるノンアルカクテルのレシピを伺いました。

安藤裕
あんどう・ゆう
株式会社アルト・アルコ代表取締役。1991年福岡県生まれ。一橋大学在学中に単身渡仏し、現地の食文化に触れたことで飲食分野でのキャリアを志す。卒業後はワイン専門商社を経て、2018年にノンアルコール専門商社アルト・アルコを創業。日本のノンアルコールシーンのけん引役として積極的に情報を発信し、2021年には『ノンアルコールドリンクの発想と組み立て(誠文堂新光社)』を上梓している。
近年、ノンアルシーンが盛り上がっている理由とは?
人々のお酒に対する意識は時代とともに変わりつつあります。海外ではノンアルコールドリンクの会社や商品が激増し、ノンアルコールシーンが盛り上がっているのだとか。
日本にもブームが押し寄せつつありますが、まだ知らない部分も多いノンアルドリンク事情。まず、本題に入る前にあらためて確認しておきたいのが、「ノンアルコールドリンク」の定義です。

ノンアルコールドリンクとは、法律的には「アルコール度数が1%未満の飲料」を指します。つまり、ノンアルといえど、アルコールが完全にゼロというわけではありません。一般的には、アルコール同様の味わいや香りを楽しめるものや、お酒の代替品をイメージして作られたドリンクを“ノンアル”と呼びます。
ノンアルコールビールが市場に初めて出回ったのは、1919年、禁酒法時代のアメリカといわれていますが、ノンアルドリンクが一般に浸透したのはここ10年のこと。2015年にイギリスのメーカーがハーブやスパイスを使ってお酒の香りや味わいを見事に再現したことで一気に広がりを見せました。

かつてのノンアルコールは、醸造したアルコール飲料からアルコール成分を抜く、「脱アルコール」という方法で作られていました。いわば「引き算」の製法です。一方近年では、果汁やビネガーにスパイスやハーブで香りを足す、「足し算」の方法で作られるものが増えています。
脱アルコール製法は、高額な機械を必要とする場合があり、数少ない大手企業にしかできないものでした。しかし、ハーブやスパイスを合わせるのであれば、ミニマムな環境でも製造が可能。新規参入が増えたことで、ノンアルコールシーンは盛り上がっていきました。

足し算製法で作られたノンアルコールのほうが、より食事と合わせやすいため、多くのレストランで提供されるようになっていますね。クオリティが上がったことで、さらなる需要が呼び起こされる好循環も生まれています。

飲む人と飲まない人が一緒に楽しむには?
ノンアルコールをとりまく環境は、製造工程以外も変わりつつあります。
例えば、欧米を中心とした世界各地では、「ドライジャニュアリー(Dry January)」という習慣が定着しつつあります。これは「クリスマス時期に食べ過ぎたぶん、1月はお酒を飲まずに過ごそう」という試みです。
日本でも、お酒との付き合い方は変容を見せていて、「飲める人も飲めない人も、一緒に飲み会を楽しもう」という風潮が社会に広まっています。お酒を飲む人と飲まない人が一緒に飲食を楽しむには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?

飲む人も飲まない人も、お互いに相手をイメージで決めつけることなく尊重し合うことが何よりも大切ですよね。重要なのは何を飲むかではなく、どんなコミュニケーションをするか。お酒を飲まなくても、豊かなコミュニケーションは図れます。
ちなみに先日、パリのノンアルコール専門店を訪れたときに、パリの飲みの場でも、年配者とお酒を控えたい若い方の間でジェネレーションギャップが起きていると聞きました。こういった傾向は世界的にあるのではないかと感じています。
お酒を飲む人が飲まない人の気持ちを知るためには、「飲み会であえてお酒を飲まない」ことを試みるのがおすすめ。また、お酒とノンアルを交互に注文すると、お酒を飲み続けた場合と満足度はさほど変わらないまま、摂取するアルコール量が少なくなるため、具合が悪くなりにくいのだとか。

ちなみに僕自身、アルコールは好きで飲むのですが、「3杯目のビールからはノンアルコールビールを頼む」などの工夫をしてみたりしています。
食事に添えてみたい!3つのおすすめカクテル
では、自宅で楽しみたいときには、どんなノンアルドリンクがおすすめでしょうか。

手軽なのは、ノンアルのビールやチューハイですが、もう一歩踏み込んで楽しむなら、ソフトドリンクや調味料を混ぜ合わせてみるのもおすすめです!
ソフトドリンクで作れる、ノンアルカクテルのレシピを3つ、安藤さんに教えていただきました。

- レモンソーダ(加糖)2:炭酸(無糖)1
- きゅうり:2センチくらいの量をスプーンなどで潰す
- ミント:適量
- 塩:ひと振り


すっきりと楽しめて食事の邪魔をしないドリンクです。塩分を入れることで、食事が進みやすくなるんですよ。レモンサワーのように楽しんでください。魚介やサラダと合わせると絶品です!
編集部の感想
爽やかな香りがインパクト大! 生のきゅうりが持つ、かすかな苦味が絶妙なアクセントになっています。レモンソーダにさらに炭酸水を加えているのにぜんぜん薄まっている感じはなくて、味がしっかりしています。甘さ控えめなので料理にも合いそうです。

- ジンジャーエール(辛口がおすすめ)2:ほうじ茶1
- ローズマリー(ライターで炙ると香りがより出る):適量
- ブラックペッパー:ひと振り

こってりした料理に合うドリンクです。ほうじ茶のカテキンやタンニンと、ジンジャエールの辛みがお肉の脂をさっぱりさせてくれます。唐揚げやアジフライにも合いますよ。
編集部の感想
ジンジャーエールと黒コショウがスパイシーで、食欲が刺激されます。ベースがお茶だから甘さがなく、大人っぽいおいしさ。個性的な味だけど、意外とどんな料理にも合いそうです。

- 梅酢(赤・白いずれもOK)1:トマトジュース(食塩無添加)3:炭酸(無糖)9
- 大葉:適量
- 塩:ひと振り

カクテルのブラッディメアリーをイメージしました。トマトの酸味が特徴で、中華などに合わせるとおいしいです。
編集部の感想
味が濃くてパンチが強いです。炭酸水で割っても、トマトと梅酢の味わいは健在。酸味がすっきりしていておいしい! スープのように飲みごたえがあり、少量でも満足できます。
ちなみに料理とのペアリングも楽しみ方のひとつですが、安藤さんいわく「料理とドリンクの色を合わせればだいたい合う 」のだとか。

透明なドリンクもあるので一概には言えないのですが(笑)、例えば先ほど紹介した「ほうじ茶ドリンク」は同じく茶色い揚げ物、「トマト味ドリンク」はエビチリなどの赤い中華によく合います。

ノンアルの未来はどうなる?
今回はソフトドリンク同士を掛け合わせて作るカクテルを教えてもらいましたが、スピリッツ系のノンアルリキュールを使ったカクテル作りもおすすめといいます。

スピリット系のなかで、特にノンアルコールが充実しているのがジンですね。日本でも広まりつつあり、オンラインショップなどで購入することが可能です。ちなみに、日本では手に入らないものも多いのですが……海外ではウォッカなど、あらゆるスピリッツのノンアル版がすでに存在しています。
フレーバーをアルコールに似せているものもあれば、アルコールの喉ごしを再現することを目指して、ジンジャーや唐辛子の辛み成分をもとに熱感を表現している商品、ミントなどで冷感を表現している商品なども出ているのだそう。

いずれこの波が日本にも届いて、市場に変革が起こることを期待しています。ノンアルコール市場が活性化することで、アルコール市場も再び盛り上がり、結果的にドリンク文化全体を盛り上げていければと思っています。

お酒を控えたい人はもちろん、気分をちょっと変えてみたい人も、ぜひ日常のなかにノンアルを取り入れてみてはいかがでしょうか。酔わずにお酒気分を味わえるだけでなく、食事の楽しみ方が広がるかもしれません。
撮影:小野奈那子
編集:ノオト
取材・執筆:吉玉サキ

吉玉サキ
よしだま・さき
北アルプスの山小屋で10年働いていたライター。著書に『山小屋ガールの癒されない日々』(平凡社)、『方向音痴って、なおるんですか?』(交通新聞社)がある。