防災はキッチンから始めよう! 災害時に役立つスープジャーレシピもご紹介
日本に住む限り、自然災害は他人事ではありません。地震や台風などで心細い思いをするたびに「防災意識を改めないと!」と思いつつ、結局なにから始めたらよいのかわからずに手つかずの人は、まずキッチンの見直しから始めてみませんか。防災食アドバイザー・今泉マユ子さんに、キッチンの災害対策とスープジャーで作れる防災レシピを教えてもらいます。
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今泉マユ子
いまいずみ・まゆこ
管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食に力を注ぎ、2014年に管理栄養士の会社・オフィスRMを起業。レシピ開発に携わるほか、防災食アドバイザーとして全国で講演、講座を行う。『もしもごはん―災害時に役立つかんたん時短、「即食」レシピ」』(清流出版)、『こどものための防災教室:災害食がわかる本』(理論社)など著書多数。レトルトの女王、缶詰の達人とも呼ばれ、テレビ出演は100以上になる。ラジオ、新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。
オフィスRM:https://office-rm.com/
日々の忙しさを言い訳に、災害対策を後回しにしていた者です。今日はいろいろ教えてください! よろしくお願いします。
よろしくお願いします。さっそくですが、災害対策で一番大切なことはなんだと思いますか?
避難グッズや、非常食をしっかり用意しておくこと……でしょうか?
惜しいっ! どんな災害が起こっても、まずは“命を守ること”を考えてください。そのために最初にすべきことは、家の中のモノが倒れない、飛び出さないように対策をとることです。
もし、いま地震がきてしまったら、おそらく我が家はしっちゃかめっちゃかです(涙)
そうやって“想像すること”が防災の第一歩だから嘆かないで大丈夫! 初心者の人にまず取り掛かってほしいのは、キッチンの防災です。キッチンは、冷蔵庫などの大型家電や、食器や調味料の瓶など、災害時には凶器となりえるものが集まっているんですよね。
確かに……! いわれてみるとその通りですね。しかも、間取りによっては、キッチンにモノが散乱すると玄関への導線が塞がれてしまうこともありそう……。
その通りです。足をケガする可能性もありますし、片付けに時間も手間もかかります。それに壊れたモノを目の当たりにするだけで精神的にも大きな負担になるんです。
ううう。さっそく、具体的にどのような対策をすべきか教えてください!
まず絶対に対策してほしいのは、冷蔵庫です。大型で中身も入っているからか転倒するイメージがつかない人もいると思うのですが、地震の際はあっけなく倒れます。専用グッズで壁に固定するのが一番オススメです。
我が家は賃貸なので、壁を傷つけるのがちょっと不安かもしれません。
そういうお宅は、つっぱり棒を使用してください。ただ、つっぱり棒だけだと地震の衝撃で外れてしまう可能性もあるので、必ず転倒防止のストッパーを併用しましょう。
わかりました!
あと冷蔵庫の中身は、万が一飛び出しても被害が最小限に済むように収納ボックスにまとめるのがオススメです。こまごました調味料などは日頃の使い勝手もよくなると思います。
冷蔵庫内がスッキリするし、災害対策もできるなんて一石二鳥ですね!
そうそう。何かを特別なことをするだけではなくて、日常の延長で気づいたら災害対策になっていた! というテクニックもあるんですよ。
なるほど〜。なんだか防災のハードルが下がってきました! うちはキャスター付きワゴンを使っているのですが、これも固定した方がいいのでしょうか?
キャスター付きは手軽に動かせることがメリットなので、悩ましいですよね。使用していないときはストッパーで固定するのが理想ではありますが、そこは自分の導線や日頃の使いやすさを考慮して考えてください。防災に絶対的な正解はありませんし、防災のためにすべての収納位置を決めるのも窮屈ですよね。
そうですね。いまはあえて保存瓶を並べて見せる収納なども人気ですよね。
せっかく自分のテンションが上がるようにキッチンをコーディネートしているのに“それは防災の観点から見てダメ!”といわれると悲しい気持ちになってしまうのもわかります。でも、危ないかもとわかったら“ワイヤーを一本つけてみようかな”とか自分の頭で考えればいいんです。落下抑制テープやガードタイプなどもあるので、自分にあったものを探してみてくださいね!
防災の意識を持ってキッチンを見回すと、気づくことがいっぱいありそうです。うちは出番が少ない食器を棚の一番上に置いているのですが、もうこれは絶対に下ろした方がいいですね。
そうしましょう! 頭より上に置くのは基本的にキッチンペーパーなど落ちてきても大ケガにならないモノだけにしたいですね。重いものや割れ物は腰より下に収納する! これはぜひ徹底してください。
食器の収納は、どうするとよいでしょうか?
まず、食器の下には滑り止めシートを敷きましょう。スタンドを使って縦置きにすれば、割れてしまったときの被害も最小限に抑えられそうですね。食器棚も冷蔵庫と同じように固定して、ガラス面には飛散防止シートを貼り付けましょう。開き扉の場合はロックアイテムをつけると、なお良いと思います。揺れを感知したときだけロックされる耐震ラッチなどがオススメです。
できる範囲で取り入れてみます。キッチンまわりは、固定が基本ですね。
次に気になるのは、食材や飲料の備えです。防災関連の情報を見ると、3日〜7日分まで推奨されている想定日数もバラバラだし、アルファ化米など見慣れない食べ物もあって……。
災害発生直後の3日間は人命救助が優先されるということは頭に入れておきましょう。4日目もすぐに物資が供給されるという保証はありません。そこで一番大切なのは、飲み水の確保です。最低限の目安として大人一人で1日3リットル×3日分=9リットル、できれば1週間分=21リットル以上は備蓄しておきましょう。 あればあるだけ安心なのですが、家庭によって保管スペースの問題もありますしね。
わかりました!
あとこれまで被災地を見てきて、野菜ジュースもオススメです。足りない栄養を補ったり、便秘解消のきっかけになったりします。片手で飲めるゼリー飲料も便利ですよ。吸う力が弱い人も飲みやすいですし、キャップができるから短時間なら保存してもいい。
好きなフレーバーを揃えておけば、どれにしようかなって選ぶ楽しみもありますね。でも、なんていうか栄養バランスを考えて好きなもの以外も揃えた方がいいのかな……とも思うのですが。
もちろん、「主食」「おかず」「野菜」が揃うにこしたことはないですよ。でも、自分が好きで食べ慣れた味をストックするのが一番いいと思います! 災害時だからこれを食べなきゃいけないなんてことはないし、口に合わないモノを食べるのって結構ストレスになりますよ。
私はどこかで見かけたチェックリストにとらわれていたようです……。もっと自由に自分が好きな食べ物をストックすればいいのですね……(喜)!
もちろん、チェックリストをひとつの目安として参考にするのはアリだと思いますよ。でも、人それぞれ食べる量も好みも違いますからね。やっぱりここでも想像力が大事です! 食べている自分がイメージできるものを備蓄してください。
ライフラインが停止したときのために、持っておくべきキッチングッズも教えてほしいです!
絶対持っていてほしいアイテムはこちらです。
- カセットコンロ
- ガスボンベ(1か月想定で12本以上あると安心)
- 水筒やスープジャーなど保温できるアイテム
- ポリ袋(高密度ポリエチレン製ならば熱湯にも耐えられる)
- ラップ(食器を汚さずに食事を取る)
調理するためのカセットコンロは必須ですね。ガスボンベも1日30分使用する想定で、12本以上持っていると安心です。ガスボンベの使用期限は約7年程度なのですが、うっかり切らさないようにチェックしてくださいね。
水筒やスープジャーもリストに入っていますね! 私も日頃から愛用していますが、緊急時にも役立つんですね!
お湯を沸かして入れておくと、いつでも温かいおしぼりを作れて、空きペットボトルにそのお湯を入れると湯たんぽ代わりにもできます。なにより温かい飲み物はホッとします。お湯は本当に大切です。スープジャーも保温調理できるから災害時にもぜひ活用してください。高密度ポリエチレン製のポリ袋を使えば、洗い物も出さずに調理ができますよ。私のオススメレシピをご紹介します!
- 無洗米…大さじ2(20g)
- お湯…200ml
1. スープジャーの中に耐熱性の半透明のポリ袋(高密度ポリエチレン製)をかけ、その中に米を入れ、次に沸騰したお湯を注ぐ。
2. ポリ袋の開け口をねじって中に押し込み、フタをして1時間経ったら完成。
※6時間以内に一度に食べきってください
お米の芯を残さないために、必ず熱湯を注いでください。寒いときはスープジャーの温度が下がらないように、タオルなどで包みましょう。
- 無洗米…大さじ2(20g)
- お湯…200ml
- 切り干し大根…2g
- 【A】
- 鶏ささみ缶…1缶
- おろし生姜…小さじ1
- おろしにんにく…小さじ1/2
- 鶏がらスープの素…小さじ1/2
1. スープジャーの中に耐熱性の半透明のポリ袋(高密度ポリエチレン製)をかけ、その中に米を入れ、次に沸騰したお湯を注ぎ、ポリ袋の開け口をねじって中に押し込み、フタをして1時間待つ。
2. 1時間後、切り干し大根(長い場合はキッチンバサミで切りながら)、Aを入れて混ぜ、フタをして5分待ったら完成。お好みで白いりごまや、ラー油をかけても◎。
切り干し大根を入れることで食感がプラスされ、食物繊維も摂ることができます。切り干し大根の汚れが気になる方は洗ってくださいね。体調が優れないときは、切り干し大根やにんにくを入れず、梅干しや酢などを入れると食べやすくなります。
スープジャーレシピ、今度作ってみます! そして、まずは家具の固定、そして食べ慣れた食品をストックするところから始めようと思いました。
防災は知識を得るだけじゃダメなんです。まずは、実際に自分で作ってみてください。普段から作って慣れておくことが大切です。
災害時は精神的に余裕がないだろうし、とにかく経験してみるって大事ですね。
はい。普段からシミュレーションしておくと、本当にそうなったときに落ち着いて行動できると思いますよ。まずはキッチンをできるだけ安全な場所にして、いつでもどんなときでも温かいものが食べられるように練習してみましょう!
今日はありがとうございました!
イラスト:今井夏子
編集:ノオト
ライター:関あやか
せき・あやか
有限会社ノオト所属の編集者、ライター。ヨガウエアやオーガニックコスメの販売経験から、好きな分野は料理、美容、健康、ライフスタイルなど、毎日の暮らしにまつわるなにげないこと。
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