ケータイマグの色はどう決まる? 商品開発担当者に聞く、カラーバリエーション秘話

1999年に誕生したサーモスのケータイマグ。機能や使い勝手のよさはもちろん、多彩なカラーバリエーションがあるのも特徴的です。そんなケータイマグの色はどのように決まるのでしょうか。マーケティング部 商品戦略室長の樋田望さんに、ケータイマグの歴史からカラーバリエーションの変遷、ケータイマグ製作への思いまでを聞きました。

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樋田望

樋田望

といだ・のぞむ

サーモス マーケティング部・商品戦略室長。 2009年11月1日入社。新潟事業所で物流業務を行った後、マーケティング部へ配属。現在は新商品開発を中心とした業務を行っている。

もっと手軽に飲みものを。ケータイマグ誕生した理由

サーモス初のケータイマグが日本に登場したのは1999年。現在ではすっかり生活に定着しましたが、当時は、日常的に水筒を持ち運ぶこと自体が一般的ではありませんでした。そうした背景があるなかで「ケータイマグ」と名付けたのは、「水筒のように携帯し、マグカップのように手軽に飲んでほしい」という思いから

「当時は、コップと中せんがついた水筒が主流。家族みんなで1本の水筒を使うことが一般的でしたが、500mlペットボトルが市場に出回り始めていたこともあり、私たちとしてはいずれ水筒もパーソナライズ化していくと考えていました。一人ひとりが自分専用の水筒を持ち、好きな時に好きな飲みものを最適な温度で飲む。そんなライフスタイルを提案していこうと、『ケータイマグ』の開発を進めていきました

そんな思いから誕生した初代のケータイマグは、フタを回して開けるとすぐに飲めるスクリュータイプ。翌年2000年には、「さらに手軽に飲めるように」と業界初のワンタッチ・オープン構造のケータイマグが誕生します。

「どちらもボトルに直接口をつけて飲むタイプだったのですが、それまでそういった文化がなく、当時はそこまで世の中に広がりませんでした」

初代ケータイマグ「JML-351」(左)と、今ではサーモスの定番となったロックリング付きのワンタッチ・オープン構造を初めて採用した「JMW-350」(右)

ケータイマグに大きな転換が起きたのは、2007年ごろ。節約ブームが起きたことをきっかけに、マイボトル文化が世間に広まっていきました 。それに伴い、サーモスでもさらなる進化を目指し、軽量化が進んでいきます。

2012年、軽量・コンパクト化した「真空断熱ケータイマグ」のJNLシリーズが登場。これまでのものよりも格段に軽くなり、飲み口もより洗いやすくなりました。

左は2000年発売の「JMW-350」、右は2012年発売の「JNL-350」。容量は一緒だが、重さがまったく違う。飲み口の形も進化している

パール系からマット系へ。カラーバリエーションの変遷

このJNLシリーズの誕生を皮切りに、容量やカラーバリエーションにも変化が起こります。

「JNLシリーズが誕生した当初は、容量は350mlと500mlの2サイズ、カラーは4色。それが次のバージョンでは600mlと750mlのサイズが加わり、カラーも8色にまで広げました。当時は現在とは随分違って全体的に光沢やパール感のあるカラーが主流で、一番人気は深みのあるパープルでした

2012年に発売した光沢感のあるJNLシリーズ。塗装の際、下地となる金属の色を踏まえた調整を行う必要があったという

こうしたカラーが人気なのは、時代のトレンドが反映されているからかと思いきや、当時はそうではなかったのだと樋田さん。

「カラーバリエーションを増やした当初は、その時代のトレンドをケータイマグのカラーに落とし込んでも、あまり受け入れてもらえませんでした。なのでバリエーションを増やして以降は、光沢やパール感のあるカラーをどうもっと美しく見せられるか。そういう考えをもとに、改良を重ねながら新たなカラーを展開していきました」

キラキラとした美しいカラーは定番化し、2年に1度カラーを刷新する際にも必ずラインアップするまでに。ところが2019年、樋田さんはチャレンジ企画としてマット系のカラーのケータイマグをリリース。この挑戦こそが、ターニングポイントになります。

「市場や時代を鑑み、マット系のカラーは人気が出そうと部署内でも話していたのですが、光沢やパール感のあるケータイマグと比べ、製品自体が少し暗く見えてしまうこともあって発売にまでは至りませんでした。

そんななか、2019年の発売カラーがなかなか決まらず悩んでいた時に、当時の私の上司が『チャレンジカラーをやってみたら?』と言ってくれたんです。そこで600mlと750mlの2サイズでカーキ色のケータイマグを発売したところ、ユーザーさまからものすごくご好評をいただいて。それからはマット系のカラーを積極的に取り入れるようになりました

2019年に発売したJNRシリーズのカーキ色が、その後のカラーバリエーションに変化をもたらす

一度使った色は極力使わない

カーキ色から始まったマット系カラーのケータイマグには、その後、ブラックやブルー、ホワイト、ピンクといった多彩なカラーも仲間入り。2024年9月時点で入手可能なケータイマグのカラー数は、123色にのぼります

2024年8月21日にリニューアル発売されたJNL-Sは、シリーズ過去最多、12色のカラーを展開。無数にある色の中から、このカラーにたどり着くまでにはただならぬ苦悩があったよう。

「市場調査やデザイナーさんとの情報交換などを行いながら、ラインアップを考えていきます。発売の1年半前には50案以上の色見本がすでに上がっていて、その中からパズルのように組み合わせていくのですが、市場の動向を踏まえて直前で変えたり、海外の工場と色味を何度も調整したりと、ギリギリまでベストなカラーを模索しています。サンプルが上がってくると、実際に店頭を想定して確認したりして。

私たちは常に新たなライフスタイルを提案したいという思いから、過去に発売した商品で使用したカラーは極力使わないようにしています 。色は無数にあって正解もないので難しさを感じる反面、その可能性も無限大。カラーへの迷いや悩みはつきませんが、同時に面白さも感じているんです」

JNL-Sシリーズのカラーサンプル。色だけでなく、塗装方法なども変えながら、最適なバランスを探っていく
2024年8月21日にリニューアル発売されたJNL-Sシリーズ。「個人的に期待しているのは、ベージュ系のカラー(左から2番目)。仕事中にもプライベートにもほどよく馴染んでくれると思います」と樋田さん
さらに着脱が簡単になり、よりフィットする飲み口にリニューアル

ケータイマグが誕生したから25年経った今、生活とケータイマグの距離もぐんと縮まったと樋田さんはいいます。

「この10年で、マイボトルで飲みものを持ち歩くことは私たちの日常にすっかり定着しました。アクセサリーや小物のように、ケータイマグはごく身近な存在に変わったと思うんです。これからもみなさまのライフスタイルに寄り添い、多彩なカラーのケータイマグを届けていけたらと思います」

撮影:藤原葉子
編集:ノオト
文:船橋麻貴

船橋麻貴

船橋 麻貴

ふなばし・まき

雑誌やWEB、広告などで執筆中。生涯の目標に締切厳守を掲げるものの、いろいろ遅れがちな人生。特技は暴飲暴食と思いつき旅。焼き菓子&パン1年生。

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